『星を編む』あらすじと考察|読む順番・登場人物・テーマ・感想まとめ

『星を編む』あらすじと考察|読む順番・登場人物・テーマ・感想まとめ

この記事でわかること

『星を編む』がどのような作品(続編/スピンオフ)で、3つの中編から成ること

各中編(北原先生の過去、編集者の奮闘、暁海のその後)の具体的な物語の内容

物語の中心となる登場人物たちの詳細と、彼らの複雑な関係性

前作『汝、星のごとく』との繋がりや、読むべき順番、ネタバレに関する注意点

『汝、星のごとく』の感動、その先へ。

本屋大賞受賞作の待望の続編として注目を集める『星を編む』では、一体何が描かれているのでしょうか?

前作で多くの読者の心を掴んだ北原先生の隠された過去、暁海が選んだ未来、そして彼らを取り巻く人々の新たな愛の形とは?

ヨミト
ヨミト

この記事では3つの中編から成る『星を編む』の物語のあらすじを、重要なネタバレありで徹底解説します。

各編の具体的なストーリーはもちろん、読むべき順番や登場人物たちの複雑な関係性も解説します。さらに作品を貫く深いテーマ、そして著者・凪良ゆうさんの魅力にも触れていきます。

『星を編む』のすべてを知りたい方は、ぜひこの先を読み進めてください。

『星を編む』のあらすじと作品概要

多くの感動を呼んだ『汝、星のごとく』。その待望の続編である『星を編む』は、どのような物語なのでしょうか。こ

この章では作品の全体像、前作との関係と読む順番、物語を彩る登場人物、そして著者・凪良ゆうさんについて、基本的な情報を詳しく解説します。

『星を編む』とは?作品の全体像を紹介

『星を編む』は、多くの読者の心を深く掴んだ『汝、星のごとく』の続編です。2023年の本屋大賞受賞作であり、ファン待望の作品として刊行されました。

ただし単なる続きというだけではありません。

ヨミト
ヨミト

前作の世界を別の角度から照らし出す、スピンオフ集としての側面も持ち合わせています。

この小説では、前作で語りきれなかった登場人物たちの背景が描かれています。さらにその後の人生における愛の物語を、密度の濃い3つの中編を通して丁寧に描き出しているのです。

本作誕生のきっかけ

前作を読み終えた多くの人々から、熱い声が寄せられました。「あの登場人物の過去が知りたい」「彼らの未来はどうなるのだろうか」といった声です。これが本作誕生の大きなきっかけとなりました。

作者の凪良ゆうさんは、その期待に応えました。物語の世界をさらに豊かに広げる形で本作を執筆されたのです。

各編の内容紹介

具体的に各編を見ていきましょう。まず「春に翔ぶ」では、教師・北原草介の謎に満ちた過去に迫ります。

前作で多くの読者がその背景を知りたがったであろう、彼が抱えることになった大きな秘密が明かされるのです。

次に表題作でもある「星を編む」です。ここでは若き才能・青埜櫂を支えたふたりの編集者、植木と二階堂の視点から物語が描かれます。

作品を生み出す情熱と葛藤、そして彼ら自身の仕事と人生がテーマとなります。

最後に「波を渡る」は、直接的な続編といえるでしょう。前作の感動的な結末のその先を描いています。

主人公・暁海と北原先生が歩む長い年月、ゆっくりと変化していく関係性、そして見出される新たな愛の形が語られます。

作品を読む意義

これらの物語を読むことで、『汝、星のごとく』で描かれた世界が、より立体的に立ち上がってくるでしょう。登場人物一人ひとりへの理解と共感が、一層深まるはずです。

本作は前作の感動を補完し、さらに豊かな読書体験を提供してくれます。それが『星を編む』という作品なのです。

書籍情報

出版社講談社
発売日2023年11月8日
ISBN-13978-4-06-532786-9
ページ数288ページ

前作『汝、星のごとく』との繋がりと読む順番

『星を編む』のイメージ画像
イメージ|あらすじノオト

『星を編む』は、『汝、星のごとく』と切っても切れない深い繋がりをもつ作品です。

前作は2023年に本屋大賞を受賞し、多くの感動を呼びました。本作にはふたつの側面があります。

『汝、星のごとく』のその後を描く「続編」としての側面。そして前作の重要人物の過去や別視点を掘り下げる「スピンオフ」としての側面です。

読む順番の推奨

この物語を最大限に味わうためには、まず前作『汝、星のごとく』から読むことを強くオススメします。感動をより深く体験できるでしょう。

本作のエピソードの多くは、前作の出来事を前提としているからです。登場人物たちが経験してきた時間、そして彼らが抱える想いも背景にあります。

前作を知っていれば、本作の登場人物たちの言葉や行動の意味合いがよくわかります。そして物語全体の感動が格段に増すはずです。

前作を知るメリット

具体的に説明しましょう。例えば第一編「春に翔ぶ」は、前作で重要な役割を果たした北原先生の過去を描いています。これを読めば、前作での彼の献身的な行動の理由が腑に落ちるはずです。

ヨミト
ヨミト

時に見せる謎めいた雰囲気の背景もわかり、人物像への理解が深まります。

そして第三編「波を渡る」では、前作の切ない結末の後の人生が描かれます。主人公・暁海たちの直接的な続編といえるでしょう。

前作の物語を知っているからこそ、彼らの新たな一歩がより感慨深く感じられます。関係性の変化にも、きっと心を動かされるでしょう。

『星を編む』から読むリスク

もし前作を読まずに、『星を編む』から読み始めた場合は注意が必要です。物語の核心に意図せず触れてしまう可能性があります。

特に、前作の結末や感動的な展開に関する重要な情報(ネタバレ)が含まれているのです。もちろん、各編を独立した物語として楽しむことも不可能ではありません。

しかし登場人物たちが背負ってきたドラマや、深い感情を知らずに読むことになります。そのため物語の受け止め方や、感情移入の度合いは大きく異なってくるでしょう。

『汝、星のごとく』で得た感動をさらに豊かなものにしませんか。ぜひ順番に読み進めることを検討ください。

※ 『汝、星のごとく』の詳細は、「『汝、星のごとく』あらすじ・ネタバレ徹底解説!切ない愛と人生の物語に涙…」で取り上げています。

主要な登場人物と関係性

『星を編む』のイメージ画像2
イメージ|あらすじノオト

『星を編む』の物語を深く味わうには、登場人物と関係性の理解が助けとなります。

物語を彩る主要人物たちのプロフィールと、彼らが織りなす関係性を知っておきましょう。そうすれば誰に注目し、どんな関係性に心を寄せていくかが見えてくるはずです。

物語の中心人物たち

まず中心となるのは高校教師・北原草介です。彼は前作でも重要な役割を担いました。穏やかながらも強い信念を持つ彼の知られざる過去が、「春に翔ぶ」で詳細に描かれます。

そして前作の主人公である井上(北原)暁海も重要です。オートクチュール刺繍作家として自立していく彼女の視点から見た未来が、「波を渡る」で語られます。

もうひとりの主人公、青埜櫂にも触れないわけにはいきません。

若くして亡くなった類稀なる才能を持つ作家ですが、故人でありながらもその作品と存在は、物語全体に大きな影響を与え続けるのです。

周辺の重要人物

他にも重要な人物がいます。

北原の過去の鍵を握るミステリアスな元教え子、明日見菜々。そして北原に育てられ、自身の人生を切り開いていく娘の北原結です。

さらにふたりの編集者も忘れてはなりません。植木渋柿と二階堂絵里は、櫂の才能を信じ、彼の作品を世に出すために奮闘します。

ヨミト
ヨミト

異なる立場で重要な役割を果たす植木と二階堂は、「星を編む」の章の中心人物です。

彼らの仕事にかける情熱や、それぞれが抱える家庭の事情にも注目しましょう。

複雑な人間関係

彼らの繋がりは単純なレッテルでは括れません。親子、夫婦、師弟、同僚といった言葉だけでは表現しきれないのです。

例えば、暁海と北原の関係は「互助会」としてスタートします。互いを支え合う、一般的な夫婦とは異なる形です。

また北原と結の間には、血縁を超えた深い親子関係が描かれています。これらの複雑な関係性は時に切なく、時に温かく物語を彩る要素となるでしょう。

これらの人物像と関係性を少し頭に入れておくだけで、物語への理解が深まります。

彼らの選択や心情の変化をより深く追いかけることができるでしょう。そして物語がもつ感動を余すことなく受け取れるはずです。

作者・凪良ゆうさんのプロフィール紹介

本作『星を編む』の著者、凪良ゆうさんを紹介します。凪良さんは、現代文学界で確固たる地位を築いている作家です。

書店員をはじめ、幅広い読者から熱い支持を集めています。その人気と実力は、輝かしい受賞歴が物語っているといえるでしょう。

輝かしい受賞歴

特筆すべきは二度の本屋大賞受賞という快挙です。代表作『流浪の月』(2020年)と、本作の前作『汝、星のごとく』(2023年)で受賞し、これは史上ふたり目となります。

全国の書店員が選ぶこの賞を二度受賞したことは、一つの証左です。

ヨミト
ヨミト

凪良さんの作品がいかに、多くの人々の心を捉えているかを示しているといえるでしょう。

さらに『汝、星のごとく』は高校生直木賞も受賞し、直木賞候補にもなりました。本作『星を編む』も2024年本屋大賞で第8位となるなど、発表する作品は常に大きな注目を集めています。

作家としての歩みと作風

凪良さんは京都市にお住まいで、2007年にデビューされました。キャリア初期はBLジャンルで活躍し、多くの読者を魅了しました。

ドラマ・映画化された「美しい彼」シリーズなどのヒット作も生み出しています。その後、一般文芸作品も精力的に発表されています。

凪良さんの作品には大きな特徴があります。登場人物たちの心の機微を捉える繊細な筆致。そして社会の常識や「普通」へ鋭い問いを投げかける点です。

孤独や生きづらさを抱える人々の心情に寄り添う力は、特に多くの読者の深い共感を呼んでいます。彼らの視点から世界を描き出す表現が高く評価されているのです。

作品に込められた想い

インタビューなどでは、ご自身の人生経験が創作活動の根底にある、とも語られています。

困難な状況で「物語」が心の支えだった経験をお持ちです。そうした経験が、作品に描かれる人物たちの切実さに繋がっているのかもしれません。

また複雑な状況でも、希望を見出そうとする力強さにも表れているでしょう。

ヨミト
ヨミト

本作にも凪良さんならではの深い洞察力が感じられ、人間への温かな眼差しも随所に見て取れるはずです。

ネタバレ注意!『星を編む』の詳しいあらすじと魅力

『星を編む』のイメージ画像3
イメージ|あらすじノオト

この章では次のことを取り上げて、『星を編む』の物語の核心に迫ります。

  • 各編あらすじ「春に翔ぶ」「星を編む」「波を渡る」
  • 注目話|北原先生の過去とは?「春に翔ぶ」
  • 『星を編む』が描くテーマと深い魅力
  • 心に残る名言・印象的なセリフ集
  • 読者のリアルな感想・レビューまとめ

解説のなかには重要なネタバレを含みますので、未読の方や内容を知りたくない方はご注意ください。

各編あらすじ「春に翔ぶ」「星を編む」「波を渡る」

『星を編む』は、珠玉のような3つの中編で構成されています。それぞれに異なる主人公と視点を持つのが特徴です。

ヨミト
ヨミト

各編が前作『汝、星のごとく』の世界を豊かに彩り、物語に新たな光を当てているといえるでしょう。

ここでは各編のあらすじを、もう少し詳しくご紹介します。ただし物語の重要な展開に触れる部分もありますので、未読の方はご注意ください。

第一編「春に翔ぶ」北原先生の過去

第一編「春に翔ぶ」では、北原草介の青年時代が描かれます。彼は前作で多くの読者の心を捉えた、謎多き高校教師でした。

北原先生がなぜ血の繋がらない娘・結を引き取り、ひとりで育てる道を選んだ仕事への情熱ゆえに直面する家庭生活との葛藤のでしょうか。世間の誤解を招く覚悟までして、なぜその選択をしたのかが焦点です。

その背景には、彼自身の生い立ちや親との関係からくる内面の葛藤がありました。そして問題を抱えた元教え子、明日見菜々との出会いも描かれます。

結の誕生にまつわる、切なくも強い意志に貫かれた秘密も明かされます。北原先生の人間味や彼の選択の重みが胸に迫るエピソードといえるでしょう。

ヨミト
ヨミト

「春に翔ぶ」を読むことで、北原先生の優しさや行動原理への理解が深まるはずです。

第二編「星を編む」編集者たちの奮闘

続く第二編は表題作でもある「星を編む」です。ここでは視点が変わり、ふたりの編集者の物語が展開されます。

植木渋柿と二階堂絵里は、若くして亡くなった天才作家・青埜櫂の才能を世に送り出すために尽力しました。

ヨミト
ヨミト

ふたりは櫂が遺した未完の漫画の完成と、遺作小説『汝、星のごとく』の出版に向けて奔走します。

そのプロフェッショナルな姿が描かれます。同時に仕事への情熱ゆえに直面する家庭生活との葛藤もリアルです。

現代社会におけるキャリアと家庭の両立の難しさや、複雑な夫婦関係にも触れられています。

出版業界の熱量や、ひとつの作品が読者に届くまでの道のりも感じられるでしょう。そして働くことの意味についても考えさせられるはずです。

第三編「波を渡る」その後の人生

最後の第三編「波を渡る」は、前作の感動的な物語のその先を描くエピソードとなっています。

主人公は、かけがえのない存在であった櫂を失った悲しみを抱える暁海。そして彼女と「互助会」として結婚した北原先生です。

このふたりの関係が、十数年を経てどう変化し成熟していくのかが描かれます。結をはじめとする周囲の人々の成長や変化と共に、穏やかで温かい筆致で丁寧に綴られるのです。

前作の切ない余韻を大切にしつつ、新たな愛の形と静かな希望を見出すことができます。人生の豊かさや時間の尊さを感じさせてくれるでしょう。

各編の独立性と響き合い

これらの物語はそれぞれ独立した読み応えがあります。それでありながら互いに響き合い、感動をさらに多層的で深いものにしてくれるでしょう。

『汝、星のごとく』で体験した感動が、より豊かなものになるはずです。

注目話|北原先生の過去とは?「春に翔ぶ」

『星を編む』のイメージ画像4
イメージ|あらすじノオト

※ ネタバレに注意してください。ここでは物語の重要な展開に触れます

『星を編む』のなかでも特に多くの読者の関心を集めているのが、第一編「春に翔ぶ」でしょう。

前作『汝、星のごとく』では、北原先生は主人公たちを支える重要な存在でした。しかし、どこか謎めいた部分も多かった人物です。

ヨミト
ヨミト

北原先生の穏やかさの裏に隠された過去が、「春に翔ぶ」でついに明らかになります。

人生を懸けた決意の背景

「春に翔ぶ」で描かれるのは、北原先生が衝撃的な決意をした経緯です。

なぜ血の繋がらない娘・結を、人生を懸けてひとりで育てることにしたのでしょうか。

物語は北原先生が高校教師として勤務していた時代に遡ります。化学準備室でのささやかな交流のなかで、彼は明日見菜々と心を通わせます。彼女は複雑な家庭環境に悩む教え子でした。

親の期待に息苦しさを感じ、「自由に生きたい」と願う菜々。その姿に、北原先生はかつての自分自身を重ね合わせたのかもしれません。

驚くべき選択

やがて菜々の予期せぬ妊娠が発覚します。

誰にも頼れない彼女を守るため、そして子の未来のために、北原先生は大きな決断を下すのです。それは驚くべき選択でした。

周囲からの誤解や非難を一身に受ける覚悟で、「自分が父親である」とウソをつきます。そして結を引き取るというものでした。

ヨミト
ヨミト

教師としてのキャリアや人生設計をも覆しかねない決断です。

選択の根底にある想い

北原先生の行動は、一見すると自己犠牲的に映るかもしれません。しかしその根底には、複雑な思いがありました。

善意から他人を優先するあまり、息子の自分を後回しにしてきた両親への感情。それによって諦めざるを得なかった過去への悔いです。そして何より強い願いがありました。

ヨミト
ヨミト

「誰かに決められた道ではなく、自分の意志で人生を選び取りたい」という、魂の叫びともいえる願いです。

困難な状況にある他者に寄り添うこと。それが結果的に、彼自身の心の救いにも繋がっていく様子が描かれます。

北原先生への理解が深まる

「春に翔ぶ」を読めば、北原先生への理解が深まります。北原先生のもつ優しさや強さの根源、そして抱える痛みや不器用さがわかるでしょう。

彼は単なる「良い人」ではありません。多くの葛藤を抱えながらも、自分なりの誠実さを貫こうとするひとりの人間の姿が浮かび上がってきます。この過去を知ることは重要です。

前作や本作最終話「波を渡る」での彼の選択や、時に見せる寂しさの理由が繋がります。これにより物語全体の感動がより一層、深く複雑なものとして胸に迫ってくるはずです。

『星を編む』が描くテーマと深い魅力

神秘的なイメージの本

『星を編む』が多くの読者を惹きつける理由はいくつかあります。

まず大ヒットした前作『汝、星のごとく』の世界観を継承し、さらに広げ、深めている点です。加えて本作は、普遍的なテーマを深く、静かに問いかけます。

「多様な愛の形」「自分の人生を自分で選び、生き抜くこと」。そして「時間の経過がもたらす変化と成熟」。

これらは誰もが人生で向き合うテーマであり、登場人物たちの具体的な人生を通して描かれています。

「普通」への問いかけ

物語を読むうちに、私たちは社会が作り上げた枠組みについて考えることになるでしょう。「普通」や「常識」とは何なのか、改めて問い直すきっかけになります。

ヨミト
ヨミト

登場人物たちは皆、それぞれの事情や譲れない想い、深い葛藤を抱えています。

時に世間の常識から外れる選択をすることもあります。周囲とぶつかりながらも互いを支え、自分らしい生き方を模索し続けるのです。

その姿は私たち自身の人生や、選択を静かに照らし出すかもしれません。共感や反発を含め、様々な感情を呼び起こすきっかけを与えてくれるはずです。

具体的なテーマの掘り下げ

具体的に見ていきましょう。まず「多様な愛の形」です。

北原先生と娘・結の血縁を超えた深い絆。恋愛感情とは異なる「互助会」から始まった暁海と北原先生のパートナーシップ。

編集者たちが作家や作品へ注ぐ献身的な愛情。これら従来の枠組みでは捉えきれない、様々な愛の姿が描かれています。

次に「自分の人生を自分で選択して生きること」。このテーマは多くの登場人物の行動を通して力強く示されます。

大きな代償を払いながらも信念を貫く北原先生。親の期待から逃れ自らの道を探す菜々。仕事と家庭の間で決断を迫られる編集者たちなどです。

その選択がもたらす痛みや責任にも触れつつ、自分らしくあることの尊さを伝えています。

ヨミト
ヨミト

また「時間の経過がもたらす変化と成熟」も重要なテーマです。これは最終話「波を渡る」で顕著に表れます。

かつての激しい恋の記憶が、長い年月を経て穏やかな愛情へと昇華する様子。登場人物たちが年齢を重ねる中で変化していく関係性や価値観。

これらは人生の複雑さと、それでも続いていく日々の豊かさを感じさせてくれるでしょう。

凪良ゆう作品ならではの魅力

これらの深いテーマが、凪良ゆうさんならではの筆致で紡がれている点が魅力です。

登場人物たちの息遣いまで伝わるような繊細な心理描写。心象風景と重なる美しい文章表現。これらが物語を豊かにしています。それこそが『星を編む』の最大の魅力といえるでしょう。

前作ファンにとっては、物語の裏側や登場人物たちの未来を知る喜びも加わります。読後には静かな感動と共に、深い余韻が残るはずです。

ヨミト
ヨミト

自身の人生を改めて見つめ直すような、そんな時間を与えてくれるかもしれません。

心に残る名言・印象的なセリフ集

「語録」と印字された本の表紙

『星を編む』には、心に深く刻まれる言葉が多く登場します。

物語の様々な場面で、登場人物たちが紡ぎ出す言葉は、時に鋭く、時に優しいです。それらは読後も長く記憶に残るでしょう。

ふとした瞬間に自身の人生と重ね合わせてしまうような、力強いセリフに満ちています。ここでは特に印象的な言葉をいくつか選びました。その背景と共にご紹介します。

愛と選択についての覚悟

「これもまた愛の形だというのなら、どう愛そうと完璧にはなれないのなら、もうみな開き直って好きに生きればいいのだ。そうして犯した失敗なら納得できるだろう」

これは北原先生がある種の覚悟を示す言葉です。自身の選択や人生のままならなさについて苦悩するなかで見出します。

完璧な愛や正しい人生など存在しないのかもしれません。ならば自分の選択に責任を持ち、納得できる生き方を選ぶしかない。そう読者に問いかけているようです。

ヨミト
ヨミト

北原先生の複雑な過去を知っていると、この言葉の重みが一層増して感じられるでしょう。

「置かれた場所」への疑問

「置かれた場所で咲くことを美徳とするこの国の文化(中略)けれど置かれた場所で咲ききれない花もこの世にはある」

これは社会が求める「こうあるべき」姿への、静かな疑問を投げかける一節です。環境への適応を良しとする風潮にも触れています。

誰もが同じように輝けるわけではありません。その人らしい場所や生き方があるはずだ、という多様性を肯定する温かな視線が感じられます。

ヨミト
ヨミト

窮屈さを感じている人にとって、救いとなる考え方かもしれません。

人生で最後に残るもの

「いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ」

人生経験豊かな登場人物、瞳子さんが語るこの言葉は、人生の本質を突いています。私たちが何を大切にすべきかを教えてくれるでしょう。

地位や名声、富ではなく、「自分らしさ」こそが最後に価値を持つ。このメッセージはシンプルながら非常に力強く響きます。

ヨミト
ヨミト

自分の生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれるはずです。

言葉の責任と正義

「矢を射るほうに自覚はないだろうが、小さな矢でも千本射れば相手は血塗れになる。(中略)物事の一面しか見ずに、なにが正義だ」

これは編集者である植木が、SNSの炎上を目の当たりにして抱く怒りの言葉です。

情報が溢れる現代において、安易な批判や一方的な正義感がいかに人を傷つけるか。その危険性に対する鋭い警鐘といえるでしょう。

ヨミト
ヨミト

私たち自身の情報との向き合い方、そして言葉の責任について深く考えさせられます。

愛の本質

「美しく理想どおりに整った愛などない。歪こそが愛の本質なのである。」

これは愛の理想と現実について深く考えさせられる一文です。キレイで完璧なだけが愛ではありません。

むしろ不完全さや矛盾、歪みのなかにこそ、人間的な愛の本質が宿るのかもしれない。そう示唆しているようです。

ヨミト
ヨミト

作中で描かれる、様々な関係性の根底に流れるテーマともいえるでしょう。

その他心に響く言葉

これらの言葉はほんの一例にすぎません。『星を編む』には、他にもハッとさせられるような言葉が散りばめられています。

「人生は凪の海ではない」こと。「自分のためだけでも、他人のためだけでもない」生き方。

「ぼくはどんな人間なのか。(中略)正答はなく、年を重ねるほどに選択肢は増える」自己探求の姿。

これらは洞察に満ちています。

ヨミト
ヨミト

あなたの心に響く言葉が、きっとこの物語のなかに見つかるはずです。

読者のリアルな感想・レビューまとめ

「評価」という文字を虫眼鏡で見ている

『星を編む』は発売以来、多くの読者から熱い感想が寄せられています。感動の声から、深く考えさせられたという意見まで、様々な反響です。

実際にどのような点が語られているのでしょうか。読者のリアルな声を集約してご紹介します。

前作の補完への満足感

まず非常に多く聞かれるのは満足感の声です。

前作『汝、星のごとく』で残された謎や余韻が、本作によって見事に解き明かされ、補完されたという点についてです。具体的には、次のような声が前作ファンからの高い評価を物語っています。

「前作を読んでずっと気になっていた北原先生の過去がわかりスッキリした」

「登場人物たちのその後が丁寧に描かれていて、物語が本当に完結したと感じた」

「まさに待望の続編だった」…など

前作で心に残ったもやもやが、本作を読むことで解消されたと感じる方が多いようです。

登場人物への共感と感情移入

登場人物たちの生き様や選択に対する共感や感情移入の声も後を絶ちません。

例えば、「北原先生の深い優しさと決断力に心を打たれた」という称賛が多くあります。その一方で、「彼の選択は危うく、ハラハラした」ともどかしさを感じる人もいるようです。

また様々な視点からの共感が寄せられています。

「暁海と北原先生の穏やかな関係に心温まり、救われた」。あるいは「編集者たちの情熱には胸が熱くなるが、家庭との両立の難しさに深く考えさせられた」といった感想です。

登場人物たちの葛藤や成長に、自身の経験を重ね合わせる読者も少なくありません。

深いテーマ性への言及

さらに本作が投げかける深いテーマ性も、多くのレビューで言及されています。

「多様な家族の形」「『普通』や『常識』とは何か」「自分らしく生きることの難しさと尊さ」。これらのテーマについて、「自身の経験と重ねて深く考えた」「価値観を揺さぶられた」という声が目立ちます。

ヨミト
ヨミト

特に人生経験を重ねた読者には、より一層響くテーマが多いようです。

結婚観、仕事観、そして人生そのものについて考えさせられるのかもしれません。

多様な意見と共通認識

もちろん、すべての読者が同じ感想を持つわけではありません。「一部の登場人物に共感できない」「前作ほどの衝撃はない」といった意見も見られます。

結末の受け止め方も人それぞれでしょう。しかし多くのレビューで、共通して指摘されている点があります。それは「前作を読んでからでないと魅力が半減してしまう」ということです。

ヨミト
ヨミト

総じて『星を編む』は、多くの読者の心を掴んでいる作品といえます。

前作の感動をさらに深め、多様な愛や人生について豊かに思考するきっかけを与えてくれるでしょう。そして読後に静かで深い余韻を残す力を持っています。

『星を編む』あらすじとポイント総まとめ

黒板に「まとめ」の文字

『星を編む』は、『汝、星のごとく』の世界を補完する続編・スピンオフ集です。3つの中編で主要人物たちの過去や未来、多様な愛や選択といったテーマを描きます。

前作から順番に読むことで、物語の深みと感動を最大限に体験できます。ぜひ二作あわせてお楽しみください。

それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。

  • 『星を編む』は『汝、星のごとく』の続編でありスピンオフ集である
  • 物語は3つの中編「春に翔ぶ」「星を編む」「波を渡る」で構成される
  • 前作『汝、星のごとく』を先に読むことで感動が深まる
  • 本作から読むと前作の重要なネタバレの可能性が高い
  • 「春に翔ぶ」では北原先生の衝撃的な過去が明らかになる
  • 「星を編む」では編集者たちの仕事への情熱と葛藤が描かれる
  • 「波を渡る」では暁海と北原先生のその後の人生が語られる
  • 血縁や恋愛に縛られない多様な愛の形が提示される
  • 社会の常識に問いを投げかけ自己選択の尊さを描く
  • 時間経過による人間関係や心の成熟が丁寧に描写される
  • 人生や愛の本質を突く印象的な名言が散りばめられている
  • 前作補完への満足感やテーマへの共感が読者から高く評価される
  • 作者・凪良ゆうは本屋大賞2度受賞の人気・実力作家である

最後まで見ていただきありがとうございました。

凪良ゆう 関連記事
≫ 『汝、星のごとく』あらすじ・ネタバレ徹底解説!切ない愛と人生の物語に涙…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA