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この記事でわかること
✓ 物語の始まりから結末までの詳細な流れ
✓ 主要な登場人物の性格や物語における役割
✓ 物語に込められたテーマやキャラクターの心理的な背景
✓ 作品の基本的な情報や視聴者からの多角的な評価
スタジオジブリが贈る、小さくも美しい名作『借りぐらしのアリエッティ』。多くの人がその映像美や心温まる物語に触れたことがあるのではないでしょうか。
しかしそのあらすじを深く追っていくと、「翔の行動は少し怖い?」「なぜ結末はあれほど切ないの?」といった数々の疑問が浮かび上がります。

本記事では、『借りぐらしのアリエッティ』のあらすじをネタバレありで徹底解説。
さらに、登場人物の心理や物語に隠された深いテーマ、そしてファンの間で語られる裏設定まで、作品を多角的に解き明かしていきます。
この記事を読めば、あなたの『アリエッティ』の世界がより一層深まるはずです。
『借りぐらしのアリエッティ』のあらすじと基本情報
本記事の前半では、まず『借りぐらしのアリエッティ』を楽しむための基本的な情報を網羅的に紹介します。
作品の概要から登場人物、まだ観ていない方でも安心のネタバレなしのあらすじまで、以下の項目に沿って解説していきます。
- 『借りぐらしのアリエッティ』とは?作品の基本情報
- 主な登場人物・相関図と声優キャスト一覧
- これから観る人向けの簡単なあらすじ【ネタバレなし】
- 視聴者の感想・評価まとめ
- 『借りぐらしのアリエッティ』を見る方法|無料などお得情報も
『借りぐらしのアリエッティ』とは?作品の基本情報
『借りぐらしのアリエッティ』は、2010年7月17日に公開されたスタジオジブリ制作の長編アニメーション映画です。
物語は古い屋敷の床下で人間の生活品を「借りて」暮らす小人の少女アリエッティと、病気療養のためにやってきた人間の少年・翔との出会いと心の交流を描いています。
スタジオジブリの世代交代を象徴する作品
この作品が注目された理由のひとつに、スタジオジブリの世代交代というテーマが挙げられます。
監督には当時若手アニメーターであった米林宏昌氏が、初めて抜擢されました。一方で、企画と脚本は宮崎駿氏と丹羽圭子氏が共同で担当しています。
ジブリらしい温かみのある世界観はそのままに、新しい才能が吹き込まれた作品となりました。
原作からの変更点と高い評価
原作はイギリスの児童文学作家メアリー・ノートンの『床下の小人たち』です。映画では舞台を現代の日本に移して描かれました。
国内での興行収入は92.6億円を記録し、2010年度の邦画で第1位となる大ヒットとなります。
第34回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、その芸術性も高く評価されています。
主な登場人物と声優キャスト一覧

『借りぐらしのアリエッティ』の物語は、限られた登場人物たちの繊細な心の動きによって描かれます。
ここでは物語の鍵を握るキャラクターたちと、その関係性、そして声を担当した豪華なキャスト陣を紹介します。
主な登場人物と声優キャスト
アリエッティ(声:志田未来)
本作の主人公である、14歳の小人の少女。好奇心旺盛で、物怖じしない勇敢な性格の持ち主です。初めての「借り」で人間の翔に姿を見られてしまいます。
翔(ショウ)(声:神木隆之介)
もうひとりの主人公。心臓の病を患い、手術を控えて屋敷へ療養にやってきた12歳の人間の少年。アリエッティとの出会いを通じて、生きる希望を見出していきます。
ホミリー(声:大竹しのぶ)
アリエッティの母親。心配性で人間の存在を極度に恐れていますが、家族への愛情は深い人物です。
ポッド(声:三浦友和)
アリエッティの父親。寡黙ながらも責任感が強く、「借り」の達人として一家を支える大黒柱です。
ハル(声:樹木希林)
屋敷の家政婦。小人の存在を信じており、捕まえようと執拗に追い回す、物語の敵対的な役割を担います。
スピラー(声:藤原竜也)
森で野性的な暮らしを送る、もうひとりの小人の少年。アリエッティ一家の引っ越しを手助けする重要な存在です。
登場人物の相関関係
物語の構造は、大きく「小人」と「人間」の世界に分かれています。

中心となるのは、小人の少女アリエッティと人間の少年・翔の出会いです。
本来であれば、決して交わることのないふたりが心を通わせていく一方で、家政婦のハルは彼らの存在を脅かす敵として立ちはだかります。
そしてアリエッティ一家が、新たな未来へ進むための協力者として、小人の少年スピラーが登場します。
以上ののように、キャラクターそれぞれの関係性が、物語に深みと緊張感を与えているのです。
登場人物の一覧表
登場人物 | 種族 | 性格・特徴 | 主な動機 |
アリエッティ | 小人 | 好奇心旺盛、勇敢、自立心が強い | 世界を探求し、人間を理解し、家族を守ること。 |
翔 | 人間 | 憂鬱、洞察力がある、孤独 | 手術を前に生きる希望と理由を見つけること。 |
ポッド | 小人 | 慎重、責任感が強い、熟練 | 厳格な掟に従い、家族の生存を確保すること。 |
ホミリー | 小人 | 心配性、保護的、家庭的 | 安全で安定した家庭を維持すること。人間を極度に恐れる。 |
ハル | 人間 | 執着的、詮索好き、虚栄心が強い | 「小人」の存在を証明し、過去の経験を正当化すること |
貞子 | 人間 | 親切、懐古的、穏やか | 翔に安らぎの環境を提供すること。小人の存在を信じている。 |
スピラー | 小人 | 野生的、自給自足、寡黙 | 野生での生存。小人たちの未来を象徴する存在。 |
これから観る人向けの簡単なあらすじ【ネタバレなし】

これから映画を観る方や、どんな物語か気になっている方のために、結末には触れずに『借りぐらしのアリエッティ』の魅力的な物語の導入部分を紹介します。
物語の舞台と小人たちの掟
物語の舞台は、緑豊かな庭のある古い屋敷です。
その静かな屋敷の床下には、人間の世界から角砂糖やティッシュペーパーといった生活品を少しずつ「借りて」暮らす、身長10cmほどの小人たちがいました。
小人の世界には、「人間に見られてはいけない」という、生き残るための絶対の掟が存在します。
運命的な出会い
主人公は14歳になる好奇心旺盛な小人の少女アリエッティ。
彼女は父と共に、初めての「借り」に挑戦するという大きな節目を迎えていました。しかしその日は、彼女たちの運命が大きく変わる日でもあったのです。
屋敷には、心臓の病を療養するため、12歳の人間の少年・翔がやってきます。そしてアリエッティは初めての「借り」の最中に、翔にその姿を見られてしまうのでした。
掟を破り、人間に存在を知られてしまった小人の家族。小人らを待ち受けるのは、危険なのでしょうか。それとも種族を超えた奇跡の出会いとなるのでしょうか。
この小さな出会いが、ふたりの世界を大きく動かしていくことになります。本作をお得に観る方法はコチラの欄で取り上げています。
視聴者の感想・評価まとめ
『借りぐらしのアリエッティ』は多くの人々に愛される一方、その静かな作風から評価が分かれる作品でもあります。
ここでは実際に映画を観た人たちのさまざまな感想を、肯定的な意見と否定的な意見の両方から紹介します。
肯定的な評価
多くの視聴者から絶賛されているのは、その圧倒的な映像美です。
小人の視点から描かれる世界は非常に緻密で、「ミニチュアの世界観が美しくて見とれてしまう」「日常の風景がすべて新鮮に映る」といった声が多数寄せられています。

一滴の水滴が水晶のように描かれるなど、細部へのこだわりに感動したという意見が多く見られました。
またフランスの歌手、セシル・コルベルが手がけた音楽も高く評価されています。
ケルト音楽を思わせる幻想的なハープの音色が作品の物悲しくも優しい雰囲気に完璧に合っており、「音楽を聴くだけで癒される」という感想も少なくありません。
物語については、アリエッティと翔の種族を超えた心の交流や、切ない別れの場面に「静かに胸を打たれた」「心温まる物語だった」と感動する声が上がっています。
否定的な評価
一方で物語に大きな起伏や派手なアクションが少ないため、物足りなさを感じたという意見も見られます。
『もののけ姫』のような壮大な冒険活劇を期待して観ると、「展開が単調で眠くなってしまった」と感じる人もいるようです。
また一部のキャラクターの言動に、違和感を覚えるという声もあります。
翔がアリエッティに放つ言葉が特に冷たく感じられたり、家政婦ハルの行動原理が理解しにくいと感じたりする視聴者もいました。
総じて本作は、壮大なストーリーを求める方には少し物足りなく映るかもしれません。
しかし繊細な映像美や心に染みる音楽、そして静かで優しい感動を味わいたい方にとっては、心に残る一作となるでしょう。
『借りぐらしのアリエッティ』を見る方法|無料などお得情報も

『借りぐらしのアリエッティ』を観てみたいと思っても、どこで視聴できるのか分かりにくいと感じる方もいるかもしれません。
ここでは、現在利用できる主な視聴方法と、お得に楽しむための情報を紹介します。
現在の配信状況
結論から言うと、2025年9月現在、日本の主要な定額制動画配信サービス(サブスク)では、スタジオジブリ作品は対象外となっています。
そのため、本作を視聴するには他の方法を探す必要があります。
おすすめの視聴方法
最もおすすめなのは、宅配DVDレンタルサービスの「TSUTAYA DISCAS」を利用する方法です。
このサービスは、ネットで好きなDVDを注文すると自宅のポストに届き、見終わったら近くの郵便ポストに返却するだけで完了します。

「TSUTAYA DISCAS」には、初めて利用する人向けの無料お試し期間が用意されています。
『借りぐらしのアリエッティ』は旧作扱いの作品なので、この無料期間を利用すれば、料金をかけずにレンタルして楽しむことが可能です。
店舗に行く手間なく、自宅でジブリ作品を鑑賞できるのが大きな魅力といえるでしょう。
DVDなどの購入
作品を何度も楽しみたい、手元にコレクションとして残したいという方には、DVDやBlu-rayを購入する方法もおすすめです。
Amazonや楽天ブックスといったオンラインストアや、家電量販店などで購入できます。レンタルや配信解禁を待つ必要がなく、好きな時にいつでも高画質で鑑賞できるのが最大のメリットです。
これらの理由から、ご自身のタイミングで今すぐお得に鑑賞したい場合は、「TSUTAYA DISCAS」の無料トライアルが最適な方法となります。
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- ≫ 『君たちはどう生きるか』本のあらすじと魅力を解説|テーマ・映画比較も
『借りぐらしのアリエッティ』のあらすじを徹底考察

記事の後半では、物語の核心に迫る徹底考察をお届けします。
結末を含む詳細なあらすじはもちろん、登場人物の心理分析や作品に隠された謎、ファンの間で語られる都市伝説まで。
より深く『借りぐらしのアリエッティ』を味わうための情報をまとめました。具体的には、以下の5つのポイントについて掘り下げていきます。
- 結末まで解説!物語の詳細なあらすじ【ネタバレあり】
- 翔はなぜ「やばい」「ドS」と言われるのか?徹底考察
- 【考察】『借りぐらしのアリエッティ』6つの謎と深掘り
- 【物語のその後】アリエッティと翔の未来はどうなった?
- ファンの間で囁かれる裏設定と都市伝説
結末まで解説!物語の詳細なあらすじ【ネタバレあり】
※ ここからは物語の結末を含む詳細なあらすじを紹介します。まだ映画をご覧になっていない方は、ご注意ください。
出会いとすれ違い
物語は古い屋敷の床下で暮らす小人の少女アリエッティが、初めての「借り」に出るところから始まります。
しかしその最中、病気療養のために屋敷を訪れていた人間の少年・翔に姿を目撃されてしまうのでした。
「人間に見られてはいけない」という掟を破ってしまったアリエッティと、彼女の存在に強く惹かれる翔。この小さな出会いが、二つの異なる世界の運命を大きく動かしていきます。

翔は善意からアリエッティに接触を試みますが、彼の行動はかえって小人一家の警戒心を煽る結果となります。
アリエッティは掟を破り、翔と対話を試みます。
しかし死への恐怖と孤独を抱える彼は、アリエッティに自らの境遇を重ね合わせ、「君たちは滅びゆく種族なんだね」という残酷な言葉で彼女を深く傷つけてしまうのでした。
危機と協力
すれ違いながらも互いの孤独を知ることで、ふたりの距離は少しずつ縮まっていきます。しかし翔のさらなる善意が、事態を悪化させます。
翔は小人たちのために作られたドールハウスのキッチンをプレゼントしようと、小人らの住処の天井を剥がしてしまうのです。
この出来事が、アリエッティ一家がこの家からの引っ越しを決意する決定打となりました。
物語の緊張が頂点に達するのは、家政婦のハルがアリエッティの母・ホミリーを捕獲し、瓶に閉じ込めてしまう場面です。
母を救い出すためアリエッティは翔に助けを求め、ここに初めて人間と小人の協力関係が生まれます。この救出劇は物語の大きな転換点となり、ふたりの間には種族を超えた固い絆が結ばれました。
別れと旅立ち
しかしこの家がもはや安全でないことは明らかでした。
一家は以前出会った野生の小人スピラーの助けを借り、新天地を求めて屋敷を去ることを決断します。
物語は夜明け前の静かな川辺でクライマックスを迎えます。
もう二度と会えないかもしれないふたりは、短い時間で育んだ深い絆を確かめ合い、互いの未来への希望を託すように、最後の言葉を交わします。

種族を超えた出会いは、絶望していた少年に勇気を与え、旅立つ少女の心に忘れられない記憶を刻みました。
ふたりが交わした約束と、互いに贈ったささやかな贈り物が持つ本当の意味とは。そして一家が新たな世界へと旅立つ姿は、切なくも希望に満ちています。
この感動的なラストシーンの全貌は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。本作をお得に観る方法はコチラの欄で取り上げています。
翔はなぜ「やばい」「ドS」と言われるのか? 徹底考察

物語のもうひとりの主人公である翔ですが、一部の視聴者からは彼の言動が「やばい」あるいは「ドS」のようだという感想が聞かれます。
穏やかな少年に見える彼が、なぜそのように評されるのか、その背景を深く掘り下げて考察します。
衝撃的な発言の裏側
翔がそのように言われる最大の理由は、アリエッティに対して放った「君たちは滅びゆく種族なんだね」という衝撃的な一言です。
この言葉は、懸命に生きる者へ投げかけるにはあまりにも無神経で、彼の印象を決定づけました。
しかしこれは翔のサディズムではなく、彼自身が抱える深い絶望の裏返しでした。
重い心臓病を患い、死を身近に感じていた彼は、自分と同じように「滅び」の運命にあるかもしれない小人たちの姿に、自らの境遇を投影してしまったのです。
それは他者への攻撃ではなく、12歳の少年が抱える痛切な孤独と恐怖から生まれた、不器用すぎる共感の言葉でした。
善意の裏目と翔の成長
また小人たちの家を壊す結果となった、ドールハウスのキッチンのプレゼントも翔の行動が誤解される一因です。
これも悪意からではなく、人との適切な関わり方を学ぶ機会が少なかった彼が、自分にできる唯一の方法で善意を示そうとした結果でした。
相手の状況を考えずに自分の「良かれ」を押し付けてしまう行動は、彼の社会的な未熟さと深刻な孤独を物語っています。
出会いがもたらした生きる勇気
重要なのは、物語の終盤で翔が大きく成長する点です。

当初、アリエッティに「滅び」を重ねていた翔は、別れの場面で「君は僕の心臓の一部だ」と伝えます。
これはアリエッティという存在が、死を待つだけだった自分に「生きる勇気」を与えてくれた、生命そのものの一部になったという告白です。
翔の言動は、単なる「ドS」なのではなく、死の淵にいた少年がひとりの少女との出会いを経て、生きる希望を見出すまでの心の軌跡そのものだといえるでしょう。
【考察】『借りぐらしのアリエッティ』6つの謎と深掘り

『借りぐらしのアリエッティ』は、ただのファンタジーアニメーションにとどまらず、多くの深いテーマや問いかけを内包しています。
ここでは物語に隠された6つのポイントを考察し、その魅力をさらに深掘りしていきます。
① 作品が本当に伝えたいこととは?
この作品が伝えるメッセージは、種族を超えた友情物語だけではありません。より深いテーマとして、現代の消費社会に対する問いかけが挙げられます。
必要なものだけを必要な分だけ「借りて」生活する小人たちの姿は、あらゆるものを所有することが当たり前となった私たちの暮らし方を見つめ直させます。
また滅びゆくかもしれないという過酷な運命を前にしても、日々の生を大切にし、希望を失わずに生きることの尊さを静かに伝えているのです。
② なぜ「人間に見られてはいけない」のか?
小人たちに伝わる「人間に見られてはいけない」という掟は、物語の根幹をなす重要なルールです。これにはふたつの意味が考えられます。
ひとつは純粋な生存戦略です。体が小さくか弱い小人らにとって、人間は悪意がなくともその存在自体が脅威となり得ます。
もうひとつは、より比喩的な意味合いです。小人らの姿は、巨大な力を持つ存在によって生きる場所を追われ、絶滅の危機に瀕している少数民族や生物のメタファーとしても解釈できます。
この掟は、か弱き者たちが世界で生き抜くための、切実な叫びでもあるのです。
③ なぜ一部で感想が「ひどい」と言われるのか?
本作は高い評価を得る一方で、一部からは「物足りない」「ひどい」といった厳しい感想も聞かれます。その主な理由は、観客が「ジブリ作品」に抱く期待とのズレにあると考えられます。
壮大な冒険活劇を期待して観た人にとって、家と庭という限られた空間で展開する静かな物語は、ダイナミズムに欠け、退屈に感じられたのかもしれません。

明確な起伏が少ない展開や、あっさりとした結末が、消化不良に感じられたという声もあります。
④ 原作『床下の小人たち』との決定的な違い
本作はイギリスの児童文学が原作ですが、映画化にあたり重要な変更が加えられています。
もっとも大きな違いは、舞台を19世紀イギリスから現代日本に移した点です。これにより物語は、私たちにとってより身近なものとなりました。
また病弱な少年・翔は原作には登場しない、映画オリジナルのキャラクターです。
原作が小人たちの生活文化の描写に重点を置くのに対し、映画はアリエッティと翔の間の淡く切ない心の交流を物語の中心に据えることで、よりドラマチックな作品へと昇華させています。
⑤ 小人目線で描かれる世界の魅力
本作がもっとも普遍的に称賛されている点は、小人の視点から描かれる世界の圧倒的な映像美です。
普段何気なく見ている角砂糖は宝物のように輝き、一滴の水は巨大な水晶玉のように見えます。
人間の耳には聞こえない時計の針の音は、小人にとっては地響きのような轟音です。この徹底したミクロの視点は、私たちに世界の再発見を促します。

ありふれた日常の中に、いかに多くの美しさと危険が潜んでいるかを教えてくれるのです。
⑥ アリエッティと翔の叶わぬ恋
アリエッティと翔の関係は典型的な恋愛物語ではありません。それは、異なる世界に生きるふたつの孤独な魂が、束の間だけ触れ合い、深く共鳴した記録です。
身体の大きさや寿命、生きる世界の根本的な違いから、ふたりの関係が成就しないことは初めから運命づけられています。
この物語の美しさと切なさは、そのはかなさの中にこそあります。
たとえ二度と会えなくとも、その出会いは互いの心の中で永遠に生き続け、ふたりの未来を支えるかけがえのない宝物となったことでしょう。
【物語のその後】アリエッティと翔の未来はどうなった?

映画の切ない別れの後、アリエッティと翔がそれぞれどのような未来を歩んだのか、多くのファンが気になるところでしょう。
物語では明確に描かれていませんが、作中に残されたヒントから彼らのその後をより深く考察します。
翔の未来
まず翔の未来については手術を乗り越え、無事に生き延びた可能性が極めて高いと考えられます。
その最大の根拠は、映画冒頭の「僕はあの年の夏…」という、物語全体が成長した彼による回想形式で語られている点です。
これは単に翔が生きていることを示すだけでなく、アリエッティとの出会いが彼の心にもたらした変化の大きさを物語っています。
アリエッティの懸命に生きる姿に心を動かされ、死を待つだけだった少年は「生きる勇気」を手にしました。
翔の心臓は物理的な手術だけでなく、この出会いによっても救われたといえるでしょう。
アリエッティの未来
一方、アリエッティの未来は翔よりも不確かですが、希望に満ちています。
一家はスピラーと共に川を下り、新たな住処を探す旅に出ました。スピラーの存在は、他にも小人が生き延びているという希望の証であると同時に、自然の中で生き抜く新たな術の象徴でもあります。
アリエッティは翔との出会いを通じて、「すべての人間が敵ではない」という重要な知見を得ました。
この経験は彼女を精神的に大きく成長させ、新しい世界で生きる上での大きな力となるはずです。
アリエッティは持ち前の勇気と得られた知恵を胸に、たくましく未来を切り拓いていくことでしょう。
ふたりの関係性
翔とアリエッティが再会する可能性は限りなく低いかもしれません。
しかしふたりの物語の本質は、再会にあるのではなく、あの夏のかけがえのない出会いがふたりの人生を永遠に変えたという事実にあります。
たとえ二度と会えなくとも、互いの存在は心の中で消えない光として灯り続け、それぞれの人生を力強く支える糧となったに違いありません。
ファンの間で囁かれる裏設定と都市伝説

どんな人気作品にも、ファンの間で語られる裏設定や都市伝説はつきものです。
『借りぐらしのアリエッティ』にも、物語をより深く楽しむための興味深い説が存在します。ここでは、特に有名なふたつの説を紹介します。
裏設定|ハルは過去に小人を見たことがある?
家政婦のハルが、なぜあれほど執拗に小人を捕まえようとするのか、不思議に思った方も多いでしょう。
実はこれには、監督がインタビューなどで語ったとされる設定があります。
監督によると、ハルは若い頃、この屋敷で実際に小人を目撃した経験があったのです。しかしそのことを誰に話しても信じてもらえず、嘘つき呼ばわりされてしまいました。
そのときの悔しさが長年のトラウマとなり、「いつか必ず自分の手で小人を捕まえ、皆に存在を証明してやる」という強い執念に繋がったとされています。
この設定を知るとハルが単なる悪役ではなく、長年の孤独と悔しさを抱えた悲しい人物のようにも見えてきます。
都市伝説|アリエッティのモデルはゴキブリ?
ファンの間で囁かれる最も衝撃的な都市伝説のひとつに、「アリエッティたち小人のモデルはゴキブリではないか」という説があります。
その根拠として、人間の家の床下や壁の隙間に隠れ住んでいること、夜行性であること、人間の食べ物を拝借して暮らしていることなどが挙げられます。
しかしこの説を裏付ける公式な情報は一切存在しません。
作中でもゴキブリはアリエッティたちが撃退すべき存在として描かれており、宮崎駿氏の企画メモにも「ゴキブリに悩まされつつ暮らす」といった記述があります。
このことからも、両者は明確に区別されていることがわかります。
生態に類似点はあるものの、この都市伝説はあくまでファンのユニークな解釈のひとつといえるでしょう。
「借りぐらしのアリエッティ」あらすじと要点の総まとめ

『借りぐらしのアリエッティ』は、単なる小人の少女と人間の少年の物語ではありません。
それは限られた時間の中で生まれる絆の尊さと、失われゆく運命に抗いながらも懸命に生きることの美しさを描いた、静かで力強いメッセージです。
それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。
- 2010年に公開されたスタジオジブリ制作の長編アニメである
- 原作はイギリスの児童文学『床下の小人たち』
- 監督は当時ジブリの若手だった米林宏昌が務めた
- 企画・脚本は宮崎駿と丹羽圭子が共同で担当した
- 興行収入92.6億円を記録し、数々の映画賞を受賞
- 主人公は好奇心旺盛な14歳の小人の少女アリエッティ
- もうひとりの主人公は病を患う12歳の人間の少年・翔
- 物語の敵役は小人の存在証明に執着する家政婦ハル
- 小人と人間の少年との禁じられた出会いと心の交流が物語の主軸
- クライマックスはハルに捕らわれた母を翔と協力し救出する場面
- 結末は一家が新天地を求め旅立つ、切なくも希望に満ちた別れ
- 翔の冷たい言動は彼自身の死への恐怖と孤独を反映している
- 「借りる」という生き方を通じて現代の消費社会を問いかける
- 小人目線で描かれる緻密で美しい世界観が大きな魅力
- 従来のジブリ作品とは異なり、静かで内省的な物語が特徴
最後までご覧いただきありがとうございました。映画コンテンツライターのヨミトがお届けしました。(プロフィールはこちら)
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