サラバ!あらすじ|なぜ感動?面白くない?読者の評価と深いテーマを解説

サラバ!あらすじ|なぜ感動?面白くない?読者の評価と深いテーマを解説

西加奈子さんの直木賞受賞作『サラバ!』。上・中・下巻にわたる長編ですが、その壮大な物語に引き込まれ、読み終えた後も深い余韻が残る作品です。

ここでは『サラバ!』のあらすじを詳しく解説します。物語の核心に触れる部分もありますので、未読の方は特にご注意ください。

また作品のテーマや読者の感想、著者の西加奈子さんのインタビュー動画についても紹介します。

『サラバ!』作品紹介|直木賞受賞作の深層へ

サラバ!の本の表紙
画像引用:サラバ!上

『サラバ!』は作家・西加奈子さんが、2014年に発表した長編小説です。小学館から刊行され、第152回直木三十五賞を受賞しました。主人公・歩(あゆむ)の誕生から30代までの半生を描いた物語です。

  • 家族
  • 宗教
  • アイデンティティ
  • 生と死

これらのような普遍的なテーマを、重厚かつ繊細な筆致で描き出しています。

また本作は、高校国語の教科書(言語文化)にも掲載されており、多くの高校生が授業で触れる作品でもあります。

『サラバ!』の主な登場人物

歩(あゆむ)

本作の主人公。イランで生まれて幼少期を過ごす。感受性が豊かで、周囲の環境や人間関係に影響を受けながら成長していく。歩は物語を通じてもっとも変化する人物です。

幼少期の無垢な状態から、思春期の葛藤、青年期の苦悩を経て、自己を確立していきます。

ヨミト
ヨミト

歩の心の動きを丁寧に追うことが、作品理解の鍵となります。

歩の父親。破天荒な性格で強い信念を持つ。仕事で世界中を飛び回る。

父は一見すると強引で理解しがたい人物ですが、彼なりの愛情や哲学を持っています。

歩との関係は物語の重要な軸のひとつです。父の言動の背景にあるものを探ることが大切です。

歩の母親。エジプト人でイスラム教徒。信仰心が篤く、穏やかな性格。

母は異文化のなかで生きる女性であり、歩に大きな影響を与えます。母の信仰心や家族への深い愛情は、物語の根底に流れるテーマと深く関わっています。

姉・貴子(きこ)

歩の姉。歩にとって良き理解者であり、心の支えとなる存在。貴子は歩にとってもっとも身近な存在であり、彼の成長を陰ながら支えます。

ヨミト
ヨミト

姉・貴子の存在は、歩が困難を乗り越えるための大きな力となります。

ヤコブ

歩の友人。歩とは対照的な性格で物語の重要なキーパーソンとなる。

ヤコブは歩にとって、もうひとりの自分のような存在です。ヤコブの存在は、歩が自分自身を見つめ直すきっかけとなります。ふたりの関係性の変化に注目しましょう。

『サラバ!』あらすじ(ネタバレ注意)

単語帳に「あらすじ」の文字が印字

※以下、物語の核心に触れる記述があります。未読の方は特にご注意ください。

始まりと異文化

物語は歩がイランで誕生する場面から始まります。父の仕事の関係で、一家はイランで暮らしていました。母はエジプト人でイスラム教徒であり、歩は幼い頃から異文化のなかで育ちます。

小学生になると一家は日本に帰国します。しかし歩は日本の学校生活になじめず、いじめの対象になってしまいます。そんな歩を支えたのは姉の貴子でした。

中学生になった歩はある宗教団体と出会います。そこで歩は、これまで感じたことのない安らぎを覚えますが、同時に父との間に葛藤が生じます。

ヨミト
ヨミト

父は宗教に対して懐疑的であり、歩の信仰を認めようとしませんでした。

過去との対峙、そして未来へ

高校生になった歩は様々な人々との出会いを通して、自身の価値観を模索していきます。友人ヤコブとの関係も深まり、彼は歩に大きな影響を与えるのです。

大学生を経て社会人になった歩は、恋愛や仕事、人間関係など、様々な経験をします。そのなかで歩は自分の過去と向き合い、家族との関係を再構築しようとします。

運命の岐路

物語の終盤、歩は大きな決断を迫られます。それは歩自身の人生、家族の未来を左右するものでした。

結末では、読者に深い感動と、さまざまな解釈の余地が残されます。歩がどのような道を選んだのか、明確な答えは示されていませんが、彼の心の成長と、未来への希望を感じさせるものとなっています。

歩がある場所に立ち、何かを見つめている場面で物語は幕を閉じます。この場所や歩が見つめているものが何を意味するのか、様々な解釈が可能です。

ヨミト
ヨミト

読者自身の人生観や価値観によって、受け止め方が異なるでしょう。

『サラバ!』読者の声|共感と多様な解釈

「評価」という文字を虫眼鏡で見ている

『サラバ!』は、多くの読者から高い評価を得ていて、次のような感想が多く寄せられています。

「主人公の心の成長に共感した」

「家族のあり方について考えさせられた」

「読み終えた後、しばらく余韻が残った」

また高校の授業で読んだ生徒からは、次のような声が聞かれます。

「最初は長いと思ったけれど、読み進めるうちに引き込まれた」

「登場人物の心情がよく理解できた」

「自分の将来について考えるきっかけになった」

一方で、「宗教的な描写が難しい」「展開が遅く感じる」といった意見もあります。

深遠なるテーマ|『サラバ!』が映す世界

サラバ!のテーマの図解

『サラバ!』は、複数のテーマが複雑に絡み合った作品です。

家族のあり方|多様な絆のかたち

歩の家族はそれぞれ異なる価値観を持ち、衝突を繰り返しながらも互いを理解しようとします。

ヨミト
ヨミト

血縁だけでなく、心のつながりや共に過ごす時間の大切さが描かれています。

歩の家族は典型的な「幸せな家族」とはいえません。しかしそれぞれの不完全さを受け入れ、支え合う姿は現代社会における家族の多様なあり方を、象徴しているといえるでしょう。

宗教と信仰|心の拠り所を問う

母の信仰、歩が出会う宗教団体など、物語には様々な宗教が登場します。信仰とは何か、宗教が人に与える影響について深く考えさせられます。

宗教は物語の重要な要素ですが、特定の宗教を肯定したり否定したりするものではありません。

ヨミト
ヨミト

むしろ宗教を通して人間の弱さや強さ、生と死の意味を問いかけています。

アイデンティティ|自分は何者か?

歩は異文化のなかで育ち周囲との違いに悩みながら、自分は何者なのかを模索していきます。自己のアイデンティティを見つけることの難しさと、その過程で得られる成長が描かれています。

アイデンティティの確立は、現代社会を生きる私たちにとっても重要なテーマです。

ヨミト
ヨミト

歩の姿は自分自身の生き方を考える上で、大きなヒントを与えてくれます。

生と死|光と影の交錯

物語には死にまつわるエピソードも登場します。生と死は常に隣り合わせであり、死を通して生の意味を考えることの大切さが示唆されています。

死は避けられない現実ですが、それをどのように受け止めるかは、人それぞれです。

物語に登場する人物たちの死生観を通して、自分自身の死生観を見つめ直すことができるでしょう。

ヤコブが見せた「もうひとりの僕」

歩とヤコブは性格も価値観も対照的な存在です。歩は内向的で繊細、ヤコブは外交的で行動的です。歩は周囲の意見に流されやすい一方、ヤコブは自分の信念を貫きます。

ふたりの違いは、次のような様々な対比を象徴しています。

  • 自己と他者
  • 内面と外面
  • 理想と現実

彼らの関係性は、読者に「自分とは異なる価値観を持つ他者を理解すること」の重要性を教えてくれます。

ヨミト
ヨミト

歩とヤコブの関係は単なる友情を超えた、深い精神的なつながりを示しています。

ふたりの対比は読者自身の内面にある、二面性を象徴しているともいえるでしょう。

『サラバ!』が面白くないと感じる人の理由

『サラバ!』は一部の読者から、「面白くない」という評価を受けることもあります。その理由として、以下のような点が挙げられます。

■物語の長さ
上・中・下巻にわたる長編であるため、読み通すのに時間がかかる。

■展開の遅さ
物語の進行がゆっくりと感じられる場合がある。

■宗教的な描写
宗教に関する知識がないと理解しにくい部分がある。

しかしこれらの点は、見方を変えれば『サラバ!』の魅力でもああるでしょう。

ヨミト
ヨミト

物語が長いからこそ登場人物の心情を丁寧に描写でき、読者は彼らに感情移入しやすくなるのです。

展開が遅いのは、人生の細やかな感情や状況の変化を丁寧に描くためであり、読者に考える時間を与えてくれます。

宗教的な描写は、多様な価値観に触れるきっかけとなり、視野を広げてくれます。

西加奈子「サラバ!」のモデルについて

「サラバ!」に関して、特定のモデルがいるかどうかは公式には明言されていません。しかし西加奈子さん自身の生い立ちや経験が、作品に色濃く反映されていることは間違いないでしょう。

西さんはイランのテヘランで生まれ、その後はエジプトのカイロで幼少期を過ごしました。この国際的な背景は主人公・歩の生い立ちと重なります。

『サラバ!』名言集|魂を揺さぶる言葉

以下は、物語のエッセンスを表す言葉です。

「人間は変われる。何度でも生まれ変われる。」

「信じることは生きることだ。」

「許すことは前に進むことだ。」

「愛することは、生きる力を与えることだ。」

「さよならは、新しい始まりだ。」

これらの言葉は物語のテーマを象徴するものであり、読者の心に深く響きます。

物語の終わりに|『サラバ!』から受け取るもの

黒板に「まとめ」の文字

『サラバ!』はひとりの人間の成長を通して、普遍的なテーマを描いた傑作です。

読み終えた後、あなたはきっと自分自身の人生について、あなたを取り巻く世界について、深く考えることになるでしょう。

まだ読んでいない方は、ぜひ一度手に取ってみてください。すでに読んだことがある方も、この記事を参考にもう一度『サラバ!』の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

西加奈子さんの他の作品もオススメです。

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