『鵺の碑』あらすじ徹底ガイド|ネタバレ有無別の解説&登場人物・評価

『鵺の碑』あらすじ徹底ガイド|ネタバレ有無別の解説&登場人物・評価

この記事でわかること

物語の基本的な設定と、ネタバレなしのあらすじ概要

物語の核心となる真相と結末(ネタバレ情報を含む)

作品のシリーズ内での位置づけや全体的な特徴

読者からの評価、書籍情報、シリーズの今後について

17年ぶりの京極夏彦『鵺の碑』、その全貌が気になりませんか?この記事では、「ネタバレなし」と「ネタバレあり」であらすじを徹底解説。

複雑な物語の核心から、登場人物(緑川佳乃は誰?)、賛否両論の評価、文庫・次回作情報まで、あなたの「知りたい!」に答えます。

ヨミト
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読む前の予習にも読後の理解にも、この記事一本でOK

17年ぶり『鵺の碑』あらすじと作品紹介

鵺の碑のイメージ画像
イメージ|あらすじノオト

17年ぶりのシリーズ最新作『鵼の碑』について、作品の基本的な設定や、まだ読んでいない方でも楽しめるネタバレなしのあらすじ、主要な登場人物などを解説していきます。

作品紹介『鵺の碑』とは?

『鵼の碑』(ぬえのいしぶみ)は、人気作家・京極夏彦氏による長編推理小説です。

本作は多くのファンをもつ、「百鬼夜行シリーズ」の実に17年ぶりとなる書き下ろし長編として、2023年9月14日に発売されました。

百鬼夜行シリーズとは

百鬼夜行シリーズは古本屋「京極堂」の店主であり、神主にして陰陽師でもある中禅寺秋彦を探偵役としています。

不可解な事件を妖怪や伝承になぞらえて解き明かす、独特の世界観が特徴の物語群です。

本作『鵼の碑』もシリーズならではの複雑な構成と、民俗学や歴史に関する深い知識が織り込まれた内容となっています。

17年ぶりの刊行と作品の特徴

17年という長い期間を経ての新作発表は、大きな話題を呼びました。また京極夏彦氏の作品は、物理的な本の厚さでも知られています。

ヨミト
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本作も単行本版は1,200ページを超えるボリュームがあり、その点も注目された要因のひとつでしょう。

シリーズのファンにとっては待望の一冊である一方、その特異な世界観と情報量の多さから、初めてシリーズに触れる読者には少し挑戦的な作品かもしれません。

本作は、京極夏彦氏の作家デビュー30周年を飾る作品でもあります。

あらすじ|ネタバレなし

鵺の碑のイメージ画像2

物語の舞台は昭和29年2月の栃木県・日光です。この地に異なる事情を抱えた複数の人物が、まるで引き寄せられるように集まります。

劇作家の久住は、滞在先のホテルで働くメイドから過去の殺人に関する衝撃的な告白を受け、懊悩することに。薬剤師の御厨は、突然姿を消した雇い主の捜索を探偵社に依頼し、調査員と共に日光へ向かいます。

ヨミト
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刑事の木場は、退職した元同僚から聞いた20年前の未解決死体消失事件の謎を追い、日光を訪れます。

学僧の築山は、発掘された古文書の鑑定のために日光に滞在中です。そして、病理学者の緑川は、亡くなった大叔父が遺した日光の診療所を整理するためやってきます。

それぞれが追う謎

彼らがそれぞれ追う謎や出来事があります。

  • 16年前の殺人の記憶
  • 20年前の死体消失
  • 失踪
  • 古文書に秘められた謎
  • 暗躍する公安の影

これらは、一見バラバラに見えるでしょう。

絡み合う事件と京極堂の関与

しかし物語が進むにつれて、これらの断片が日光という土地で複雑に絡み合っていきます。そして得体の知れないひとつの大きな事象の輪郭を浮かび上がらせていくのです。

シリーズの中心人物である京極堂こと中禅寺秋彦も、古文書鑑定のために日光に滞在しており、この不可解な状況に関わっていくことになります。

主要な登場人物紹介

たくさんの人物のフィギアの画像(登場人物のイメージ)

『鵼の碑』では、物語の核となる複数の視点人物と、シリーズでお馴染みの面々が登場します。彼らが複雑な物語を織りなします。

各パートの語り手たち

本作は「蛇」「虎」「貍」「猨」「鵺」という5つのパートに分かれています。それぞれのパートで異なる人物が語り手を務める構成です。

次の人物は、本作で初めて深く描かれる人物たちといえるでしょう。

  • 脚本家の久住加壽夫(「蛇」)
  • 薬剤師の御厨冨美(「虎」)
  • 学僧の築山公宣(「猨」)
  • 医師の緑川佳乃(「鵺」)

唯一の例外として、「貍」のパートではシリーズレギュラーのひとりである刑事・木場修太郎が語り手となります。彼らはそれぞれの目的や偶然から日光の謎に関わっていきます。

お馴染みのシリーズレギュラー

もちろん、シリーズの中心人物たちも健在です。

古本屋「京極堂」店主にして博覧強記の拝み屋・中禅寺秋彦。彼の旧友で不運な小説家・関口巽。他人の記憶が視えるという特殊な能力を持つ薔薇十字探偵社の探偵長・榎木津礼次郎。

そして同探偵社の主任探偵・益田龍一らが日光に集結します。彼らは語り手たちの相談に乗ったり、独自の調査を進めたりと、それぞれの立場で物語の進行に深く関与するのです。

脇を固めるキャラクターたち

この他にも、過去作に登場した次のキャラクターも多数登場し、物語に厚みと懐かしさを加えています。

  • 公安調査官の郷嶋郡治
  • カストリ雑誌記者の鳥口守彦
  • 木場の元相棒である長門五十次…等

そのため一部の読者からは、「百鬼夜行版アベンジャーズ」とも評されています。

注目キャラ・緑川佳乃とは?

「Key Person」の文字と鍵

緑川佳乃(みどりかわかの)は、「鵺」の章の語り手を務める、本作におけるキーパーソンのひとりです。

地方大学の医学部で基礎医学を研究する医師(助手)であり、人の生死に直接関わる臨床現場を避け、研究の道を選んだという背景を持っています。

人物像と意外な繋がり

年齢は30代半ばですが小柄で童顔、前髪を切り揃えた髪型から、少女のような印象を与える外見が特徴です。

シリーズの主要人物である中禅寺秋彦、関口巽、榎木津礼次郎とは女学校時代の知人という、意外な繋がりを持っています。

物語への関わり方

物語には、20年以上も音信不通だった大叔父・緑川猪史郎の死をきっかけに関わることになります。

昭和28年夏に亡くなった大叔父の遺骨を引き取り、彼がかつて診療所を営んでいた日光の旧尾巳村を訪問。そこで偶然関口と再会します。

そして大叔父が遺したカルテを整理するなかで、ある重要な事実に気づき、事件の真相に迫る手掛かりを発見することになるのです。

緑川佳乃の魅力と今後

冷静で知的な人物ですが、作中の言動からは人間的な深みも感じられ、読者からの注目度も高いキャラクターといえるでしょう。

一部では、過去に中禅寺へ特別な感情を抱いていた可能性も示唆されています。

ヨミト
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今後のシリーズでの再登場や、物語へのさらなる関与が期待される人物です。

詳細なあらすじは?『鵺の碑』の評価と今後

鵺の碑のイメージ画像3
イメージ|あらすじノオト

ここからは、物語の結末を含む詳細なあらすじや、読者からの評価、書籍情報、そしてシリーズの今後について深く掘り下げていきます。

ネタバレにご注意ください。

詳細なあらすじと結末|ネタバレ注意

この項目では『鵼の碑』の物語の核心と結末に触れます。未読の方はご注意ください。

浮かび上がる巨大な陰謀の影

物語が進むにつれ、日光で起こっている(あるいは過去に起こった)とされる様々な出来事が明らかになります。

  • メイドの殺人の記憶
  • 20年前に消えた三つの死体
  • 薬局店主の失踪
  • 発掘された古文書
  • 旧日本軍による秘密計画の影

これらはひとつの巨大な陰謀、特に「原子力兵器開発」に関連しているのではないかと登場人物たちは疑い始めます。

しかし京極堂こと中禅寺秋彦が解き明かす真相は、それらとは異なるものでした。

偽装工作「旭日爆弾開発計画」の真相

結論からいうと、戦前に日光の山中で行われていたのは、実際の兵器開発ではありません。

反戦主義者・山辺唯継らが軍部を欺き、原子力の危険性を訴えるために仕組んだ大規模な「偽装工作(旭日爆弾開発計画)」だったのです。

この「ハリボテ計画」が、20年後の昭和29年において、様々な憶測や誤解を生む元凶となっていました。

個々の謎の解明

個々の謎についても、真相は異なるものでした。桜田登和子の殺人の記憶は、幼少期の体験が歪められたものであり、父の死には別の真相がありました。

20年前に消えた死体は、芝公園で発見された後、特高警察などの介入により持ち去られたものです。その一部は多西村で発見された笹村夫妻(市雄と倫子の両親)の焼死体であった可能性が示唆されます。

寒川秀巳の父・英輔の死は事故でしたが、遺体が発見現場から一時的に動かされたことがありました。そして秀巳自身が父の死の真相を探るうちに偽装計画の存在を知ります。

彼は陰謀論と自身の病によって精神的に追い詰められ、最終的に失踪したことが語られます。

憑き物落としと物語の結末

物語の終盤、中禅寺は関係者、特に偽装計画の存在に惑わされていた学僧・築山に対し、これらの事実を解き明かします。そして、「ありもしない陰謀」という憑き物を落とすのです。

また陰で関係者を見守り、時に干渉していた桐山勘作と笹村市雄・倫子兄妹が、実は別シリーズ『巷説百物語』に登場する化物遣いの末裔であったことも判明します。

彼らは自分たちの古い作法で事態を収拾しようとしました。しかし現代では通用せず、寒川を救えなかったことを悟り、姿を消します。

ヨミト
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結局、昭和29年の日光では、新たな殺人事件などは発生していません。

一連の騒動は過去の偽装工作と、それに翻弄された人々の誤解や個人的な問題が複雑に絡み合った結果であった、というのが物語の結末です。

『鵼の碑』の魅力と評価・考察

「考察」の文字とノート

17年ぶりの百鬼夜行シリーズ最新作として発表された『鵼の碑』は、多くの読者から様々な評価や考察が寄せられています。

構成の妙とキャラクターの魅力

本作の魅力としてまず挙げられるのは、その複雑かつ緻密な構成です。「蛇」「虎」「貍」「猨」「鵺」という5つのパートで異なる視点から物語が語られます。

それらが徐々に絡み合い、ひとつの大きな絵を描き出していく手法は、読者に深い没入感と謎解きの醍醐味を与えるでしょう。

また次のお馴染みのキャラクターたちが勢揃いします。

  • 中禅寺
  • 関口
  • 榎木津
  • 木場
  • 益田…など

彼らの変わらぬ関係性や活躍を見られる点も、長年のファンにとっては大きな喜びといえます。

他シリーズとのリンク

特に京極夏彦氏の別シリーズである、『巷説百物語』や『書楼弔堂』との繋がりが明確に示唆された点は注目されました。作品世界全体の広がりを感じさせ、感慨深いものがあります。

評価が分かれる点

一方で、評価が分かれる点も存在します。過去のシリーズ作品と比較して、本作では猟奇的な事件や派手なアクションシーンが少ない傾向に。

物語の展開が会話主体で進むため、一部の読者からは「地味」「物足りない」といった声も聞かれます。

特に、シリーズのクライマックスである京極堂の「憑き物落とし」のシーンが、過去作ほどのカタルシスを感じさせなかったという意見。

また「結局何も起こらなかった」という結末に、肩透かしを感じたという感想も見受けられます。

『巷説百物語』シリーズとのリンクについても、同シリーズを読んでいない読者には唐突に感じられたり、十分に楽しめなかったりする可能性が指摘されています。

考察されるテーマ性

考察の点では、「陰謀論」や「情報の断片化がもたらす誤解」、「過去の亡霊にいかに向き合うか」といったテーマ性が読み解かれています。これらは現代社会にも通じるものでしょう。

タイトルの「鵼」が象徴するように、様々な要素が混ざり合って実体のない不安や恐怖を生み出す様は、現代の情報社会における問題とも重なります。

17年という長い年月が読者の期待を大きく膨らませたこともあり、その期待とのギャップが賛否両論を生んでいる側面もあるでしょう。

総じて、『鵼の碑』はシリーズの新たな境地を示す意欲作といえます。その評価は読者のシリーズへの思い入れや読書体験によって大きく左右される作品となりそうです。

読者の感想 つまらない?期待外れ?

「評価」という文字を虫眼鏡で見ている

『鵼の碑』は17年ぶりのシリーズ長編ということで、発売前から非常に大きな期待が寄せられていました。そのため、読後の感想は一様ではありません。

「待った甲斐があった」という肯定的な声がある一方で、「期待とは違った」「つまらない」と感じたという否定的な意見も見受けられます。

肯定的な感想

肯定的な感想としては、まず「お馴染みのキャラクターたちに再会できて嬉しい」「シリーズ独特の世界観にまた浸れて満足」といった、長年のファンならではの喜びの声が多く聞かれます。

ヨミト
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複雑に絡み合う複数の視点からの物語が、終盤で見事に収束していく構成の巧みさを評価する声もあります。

またコアなファンからは、京極夏彦氏の他シリーズ(特に『巷説百物語』)とのリンクが明かされた点に、驚きや感動の声が上がっています。

否定的な感想とその背景

一方の否定的な感想で目立つのは、やはり17年という長い期間が育んだ期待感とのギャップでしょう。

過去作にあったような猟奇的な事件や派手な展開、読後感を左右する強烈なカタルシスが本作では控えめです。そのため、「肩透かしだった」「物足りない」と感じる読者も少なくありません。

「結局何も起こらなかった」という結末や、一部の謎解き(燃える碑のトリックなど)が弱いという指摘も見られます。

さらにファンサービスとも取れる過去作キャラクターの登場が、物語の必然性に欠けると感じる意見。あるいは『巷説百物語』シリーズ未読のため終盤の展開についていけなかった、という声も存在します。

物理的な側面と総評

物理的な本の「重さ」「厚さ」「読みにくさ」に関する言及も多いですが、これはシリーズの特徴として半ば受け入れられているようです。

総じて、『鵼の碑』は読者がシリーズに何を求めているか、また、他シリーズを含めた京極作品への理解度によって、評価が大きく分かれる作品といえるでしょう。

書籍情報 文庫本の発売はいつ?

神秘的なイメージの本

『鵼の碑』は複数の形態で刊行されており、現在では文庫版も入手可能です。

刊行形態と価格

最初に発売されたのは、2023年9月14日の単行本と新書版(講談社ノベルス)です。

単行本(ISBN: 9784065330722)は、1280ページ、重さ約1.2kgという非常にボリュームのある仕様で、価格は3,960円(税込)です。

新書版(講談社ノベルス、ISBN: 9784065150450)は、832ページと単行本よりはコンパクトですが、それでも厚みがあります。価格は2,420円(税込)でした。

一般的に京極作品は版ごとに加筆修正が入ることがあります。本作ではノベルス版を元に単行本版で調整が加えられているという情報もあります。

電子書籍版も各書籍版の発売に合わせて配信されてきました。

待望の文庫版

多くの読者が待ち望んでいた文庫版(講談社文庫、ISBN: 9784065362433)は、2024年9月13日に発売されました。これにより、単行本や新書版の物理的な大きさにためらっていた方も手に取りやすくなったことでしょう。

ヨミト
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文庫版の解説は作家の小川哲氏が担当しています。文庫版の電子書籍も同日に配信が開始されました。

どの版を選ぶかは、価格、サイズや重さ、保管場所、カバーデザインの好み、あるいは電子書籍の手軽さなど、ご自身の読書スタイルに合わせて検討されるとよいでしょう。

発売日ISBNページ数定価(税込)
単行本2023年9月14日978-4-06-533072-21,2803,960円
新書版(ノベルス)2023年9月14日978-4-06-515045-08322,420円
文庫版2024年9月13日978-4-06-536243-31,3441,700円
電子書籍版各版と同時期変動

百鬼夜行シリーズの次回作は?

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イメージ|あらすじノオト

『鵼の碑』を読み終えた多くの方が気になるのは、やはりシリーズの次回作についてでしょう。

嬉しいことに、次回作のタイトルは『鵼の碑』の刊行に合わせて既に発表されています。

その名は『幽谷響の家』(やまびこのいえ)です。

次回作タイトル『幽谷響の家』

これはシリーズの恒例で、作品の帯や巻末などで次回作名が告知されることがあります。

ヨミト
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「幽谷響」とは、山や谷で声を発した際に音が反射して聞こえる現象、いわゆる「やまびこ」を指す古風な表現。

かつてはそれを妖怪や山の神の仕業と考える地域もありました。このタイトルが物語にどのように結びついてくるのか、想像が膨らみます。

発売時期と内容の推測

ただし現時点(2025年4月)で『幽谷響の家』の具体的な発売時期は発表されていません。

『鵼の碑』が前作から17年を経て刊行されたことを考えると、ある程度の時間が必要になる可能性はあります。

一方で作者インタビューや関連書籍での言及から、『鵼の碑』の執筆と並行して次回作の構想も進められていたのではないか、という希望的な観測もあります。

また舞台設定に関しては、作者自身が東北地方になる旨を語っています。加えて、スピンオフ作品『今昔百鬼拾遺』シリーズ内の記述からも、東北が舞台となる可能性が高いと推測されます。

そのため、『鵼の碑』で印象的な活躍を見せた緑川佳乃(青森出身という設定)が再び登場するのではないか、と期待する声も聞かれます。

ヨミト
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まとめると、次回作のタイトルは『幽谷響の家』で、舞台は東北と見られていますが、発売時期は未定です。

ファンとしては、気長に続報を待つことになりそうです。

百鬼夜行シリーズの他の作品紹介

人差し指(チェックのイメージ)

『鵼の碑』で百鬼夜行シリーズに興味を持った方や、他の作品も読んでみたいという方に向けて、シリーズの代表的な作品をいくつかご紹介します。

本筋の長編小説

まずシリーズの本筋である長編小説は、『姑獲鳥の夏』(1994年)から始まり、『魍魎の匣』、『狂骨の夢』、『鉄鼠の檻』、『絡新婦の理』へと続きます。

さらに『塗仏の宴』(宴の支度・宴の始末の二分冊)、『陰摩羅鬼の瑕』、『邪魅の雫』、そして『鵼の碑』へと繋がっています。

各作品で独立した怪事件が描かれますが、登場人物たちの関係性は作品を追うごとに深まっていきます。

ヨミト
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なかでも『魍魎の匣』は日本推理作家協会賞を受賞し、映像化もされるなど特に有名です。

また『絡新婦の理』や長大な『塗仏の宴』は、その複雑な構成と読み応えから高く評価されています。

短編集・スピンオフ作品

シリーズの世界をさらに深く知るためには、短編集やスピンオフ作品もオススメです。

『百鬼夜行――陰』と『百鬼夜行――陽』は、本編の周辺人物に焦点を当てた短編集となります。

特に『陽』には『鵼の碑』の前日譚とされる「墓の火」「蛇帯」が収録されているため、合わせて読むと理解が深まるでしょう。

『百器徒然袋』シリーズ(雨・風・鳴)は、榎木津礼次郎が活躍するスピンオフで、本編とは異なる軽妙な面白さがあります。

『今昔百鬼拾遺』シリーズ(鬼・河丙・天狗、合本版『月』)は、中禅寺敦子が主人公のスピンオフです。

読む順番と他シリーズ

読む順番については、基本的には刊行順が推奨されます。しかし各長編は独立した事件を扱っているため、興味を持った作品から読み始めることも可能です。

ただし『鵼の碑』は、多くの過去作キャラクターや出来事が関わるため、シリーズ未読の方にはやや難易度が高いかもしれません。

初めてシリーズに触れる方には、比較的読みやすいとされるスピンオフ『今昔百鬼拾遺月』や、シリーズの代表作である『魍魎の匣』から読み始めることをオススメします。

さらに時代設定は異なりますが、『巷説百物語』シリーズや『書楼弔堂』シリーズも、百鬼夜行シリーズと世界観を共有しています。

特に『鵼の碑』ではその繋がりが色濃く描かれました。興味があれば、これらの作品に手を伸ばしてみるのも良いでしょう。

『鵺の碑』あらすじと全体のまとめ

黒板に「まとめ」の文字

『鵺の碑』のあらすじから評価、関連情報まで解説しました。複雑で賛否分かれる本作ですが、シリーズの新たな一歩を示した重要作です。

この記事が、あなたの作品理解を深める助けとなれば幸いです。次回作『幽谷響の家』の続報も楽しみに待ちましょう。

それでは最後にポイントを箇条書きでまとめて終わりにします。

  • 百鬼夜行シリーズ、17年ぶりの書き下ろし長編である
  • 2023年9月発売、作者デビュー30周年記念作品でもある
  • 昭和29年の日光を舞台とし、複数の視点から物語が展開される
  • 過去の事件や失踪、殺人の記憶などが複雑に絡み合うミステリーである
  • 京極堂らシリーズ主要人物と、緑川佳乃ら新キャラが登場する
  • 事件の核心は「原子力兵器開発」に見せかけた大規模な偽装工作であった
  • 作中の現代(昭和29年)では新たな殺人は起こらず、過去の問題が解き明かされる
  • 『巷説百物語』シリーズとの深い繋がりが描かれている
  • 緻密な構成と他シリーズとのリンクは本作の大きな魅力である
  • 一方で結末やカタルシスの点で過去作との比較から賛否が分かれる
  • 単行本、新書版に加え、2024年9月に文庫版も発売された
  • シリーズ次回作『幽谷響の家』のタイトルが発表されている

最後まで見ていただきありがとうございました。

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