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この記事でわかること
✓ 主人公が父親を殺害し絶望するも、希望を見出そうとする物語の全容
✓ 映画版が希望を描く結末に対し、原作漫画は自殺で終わるという決定的な違い
✓ 東日本大震災という現実の出来事が、映画のあらすじとテーマに与えた大きな影響
✓ 過酷な内容と原作からの改変により、視聴者の評価が大きく分かれる作品であること
「ただ“普通”に生きたい」—そう願うだけの少年が、なぜ絶望の淵に立たされ、取り返しのつかない事件を起こしてしまったのでしょうか。
園子温監督による衝撃作、映画『ヒミズ』。本作は原作漫画とはまったく異なる結末を迎えることで、公開当時に大きな議論を呼びました。

ここでは映画『ヒミズ』のあらすじを、ネタバレなし・ありの両方で徹底解説します。
なぜ映画版は希望を描き、原作漫画は絶望を描いたのか。その背景にある東日本大震災の影響や、賛否両論を呼んだ視聴者の感想まで、本作を深く理解するための情報をまとめました。
映画『ヒミズ』のあらすじをネタバレなしで紹介
この章では、まずネタバレを気にせずにお読みいただける、以下の内容について解説していきます。
- 映画『ヒミズ』の基本情報
- 主な登場人物とキャスト・相関図
- 大まかなあらすじと世界観【ネタバレなし】
- 視聴者の感想・評価まとめ
- 『ヒミズ』を視聴・購読する方法
映画『ヒミズ』の基本情報
映画『ヒミズ』は、2012年に公開された日本の作品です。監督・脚本は『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』で知られる園子温監督が務めました。
原作と園子温監督
原作は漫画家の古谷実による同名のシリアスな漫画です。古谷氏は『行け!稲中卓球部』で一世を風靡しましたが、本作ではギャグ路線を封印しています。
東日本大震災が与えた影響
本映画が特筆すべき点は、製作準備中に東日本大震災が発生したことです。これを受けて園監督は脚本を大幅に書き直しました。
そのため、原作がもつ若者の心の闇というテーマだけではありません。震災後の日本の現実や希望も色濃く反映された内容となっています。
項目 | 詳細 |
公開日 | 2012年1月14日 |
監督・脚本 | 園子温 |
原作 | 古谷実『ヒミズ』 |
上映時間 | 129分 |
レイティング | PG12 |
主な登場人物とキャスト・相関図

本作の物語は、過酷な現実に直面するふたりの若き主人公を中心に展開します。ふたりを取り巻くのは、個性的な大人たちです。
主演のふたりをはじめ、園子温監督作品にゆかりの深い実力派俳優陣が出演しています。それぞれが強烈な印象を残すキャラクターを演じ切りました。
物語を動かすふたりの主人公
住田祐一(すみだ ゆういち) / 演:染谷将太
物語の主人公である15歳の中学生です。
「普通」の大人になることを漠然と夢見ています。しかしそれは、暴力的な父親や育児放棄の母親からなる家庭環境への反発でもありました。
崩れそうな日常の中で必死に均衡を保とうとしますが、次第に精神的に追い詰められていきます。
茶沢景子(ちゃざわ けいこ) / 演:二階堂ふみ
住田の同級生で、彼に異常なまでの好意を寄せる少女です。
住田の言葉を「語録」として壁に貼るなど、常軌を逸した行動が目立ちます。しかしその行動の背景には深刻な事情がありました。
彼女自身も両親から虐待を受けており、住田に救いを求めている様子が描かれます。
主人公たちを取り巻く大人たち
夜野正造(よるの しょうぞう) / 演:渡辺哲
貸しボート屋の敷地に住み着くホームレスたちのリーダー的存在です。
原作とは設定が異なり、震災で多くを失った過去を持つ人物として登場します。住田の未来を信じ、彼を何とか助けようと奔走する人情味のあるキャラクターです。
住田の父 / 演:光石研
住田に対して日常的に暴力を振るい、金の無心をするどうしようもない父親です。父の存在が、住田の運命を決定的に狂わせる引き金となります。
金子(かねこ) / 演:でんでん
住田の父が借金をした金融会社の社長です。
冷酷な取り立て屋として住田に暴力を振るう一方、後に彼へ奇妙な関心を示すなど、複雑な側面を持つ人物として登場します。
その他のキャスト
その他にも、次のような俳優陣が、主人公たちに大きな影響を与える重要な役柄を演じています。
- 窪塚洋介さん
- 渡辺真起子さん
- 黒沢あすかさん
- 吹越満さん…など
大まかなあらすじと世界観【ネタバレなし】

映画『ヒミズ』は、15歳の少年・住田祐一の切実な願いを描く物語です。
多くの若者が大きな夢や希望を語る中、彼が望むのはただひとつでした。それは「誰にも迷惑をかけない普通の大人になること」です。
住田は自らを、光の当たらない場所で静かに生きるモグラ(ヒミズ)になぞらえ、平凡な日常こそがもっとも価値あるものだと考えています。
崩壊した日常と世界観
しかし住田を取り巻く現実はそのささやかな願いすら許しません。
物語の舞台は東日本大震災後の日本であり、社会全体が不安と喪失感に包まれています。さらに住田自身の家庭環境は崩壊状態にありました。

戻ってきた暴力的な父親と育児を放棄した母親によって、彼が守ろうとした日常は常に脅かされ続けます。
そんな住田の前に同級生の茶沢景子が現れます。彼
女は住田の独特な達観に強く惹かれ、一方的に好意を寄せ続けるのです。一見すると常軌を逸した行動に見えるかもしれません。
しかし彼女自身もまた家庭に深刻な問題を抱えており、住田に救いを求めている側面があります。
物語はこのふたりが理不尽な大人たちによって、絶望の淵に追い詰められます。そしてふたりがいかにして、もがき苦しむのかを容赦なく描いています。
視聴者の感想・評価まとめ

映画『ヒミズ』に対する評価は、観客の間で大きく分かれています。「心を揺さぶる傑作」という絶賛と、「原作とは別物で受け入れ難い」という否定的な意見が混在する状況です。
肯定的な意見|主演の演技と希望のラスト
肯定的な感想でもっとも多く見られるのは、主演の染谷将太さんと二階堂ふみさんの演技に対する賞賛です。
当時10代であったふたりが見せた、生々しく鬼気迫るパフォーマンスは圧巻でした。「ふたりの演技だけでも見る価値がある」「エネルギーに満ち溢れていた」と高く評価されています。

また原作漫画の救いのない結末とは異なる点も評価されました。
映画版では困難な状況でも生きることを選ぶ、希望に満ちたラストシーンが描かれています。
この変更が公開当時の社会情勢とも相まって、力強いメッセージとして心に響いたという声も少なくありません。
否定的な意見|原作との違いと演出
一方で原作漫画のファンからは厳しい意見も寄せられています。
原作がもつ静かで内省的な絶望感や、心理描写と比較する声が上がりました。
映画版は園子温監督特有の激しい絶叫や過剰な演出が目立つため、「原作の良さが失われている」「登場人物の感情表現が大げさすぎる」といった違和感を指摘する意見があります。
さらに東日本大震災の要素を、物語に組み込んだ点についても賛否両論です。
「テーマが散漫になった」「現実の悲劇を安易に利用しているように感じる」といった批判的な見方があります。
その一方「時代性を反映した見事な改変だ」、と肯定的に捉える感想も見受けられます。
総じて、観る人の好みや原作への思い入れによって、評価が大きく変動する作品といえるでしょう。
『ヒミズ』を視聴・購読する方法

映画『ヒミズ』と原作漫画は、それぞれ異なる方法で楽しむことができます。
映画版と漫画版では物語の結末やテーマの扱い方に違いがあるため、両方を比較すると作品への理解がより深まるでしょう。
映画版の視聴方法
映画版については、各種動画配信サービス(VOD)で視聴可能です。
U-NEXTやHuluなどの見放題プランに含まれている場合や、Amazonプライムビデオなどでレンタル対象となっていることがあります。
ただし配信状況は時期によって変動するため、契約しているサービスで最新情報を確認するのがおすすめです。
またDVDやBlu-rayもリリースされています。
原作漫画について
原作漫画は古谷実氏によって描かれ、全4巻で完結しています。新装版として上下巻で再編集されたものもあり、電子書籍ストアやオンライン書店、実店舗などで購入できます。
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結末まで『ヒミズ』のあらすじと原作の違いを解説

ここからは結末のネタバレを含め、より深く作品を考察していきます。具体的には、以下のポイントについて解説します。
- 結末までのあらすじ【ネタバレあり】
- 【原作比較】映画と漫画の決定的違い
- 原作結末の考察「決まってるんだ」の意味
- 原作ラスト「何それ?」結末に隠されたテーマ
- 園子温監督が描く絶望と希望
- 茶沢景子はなぜホームレスになったのか?
- 本作に関するよくある質問|茶沢「その後」など
結末までのあらすじ【ネタバレあり】
※これ以降は物語の核心に触れる重大なネタバレを含みます。ご注意ください。
主人公・住田祐一の「普通に生きたい」というささやかな願いは、完全に崩壊します。
母親が男と駆け落ちし、蒸発していた父親が戻ってきたからです。
父親は住田に容赦ない暴力を振るい、「お前なんか生まれなければよかった」「保険金のために死んでくれ」といった暴言を浴びせ続けます。
父親殺しと「オマケ人生」
この言葉が引き金となり、積もり積もったものが爆発した住田は、衝動的に父親をブロック塀で殴り殺害し、遺体を埋めてしまいます。
この事件を境に、住田の精神は急速に追い詰められていくのです。

住田は自分の人生を「オマケ人生」と呼び、自らの存在価値を見失います。
「どうせゴミ以下の命なら、世の中の害悪となる悪党を殺してから死のう」という歪んだ正義感に取り憑かれ、包丁を持って夜の街をさまよい始めます。
周囲の支えと最後の決断
一方、同級生の茶沢景子は、住田の異変に気づきながらも彼を必死に支えようとしました。
住田が父親殺しを告白しても、彼女は彼を見捨てません。「自首して罪を償い、その先にある未来を一緒に生きよう」と必死に説得を続けます。
ホームレスの夜野たちも、住田のために父親の借金を返済するなど、彼なりに未来を託そうとしました。
物語のクライマックス、住田は自暴自棄になり、すべての希望を捨てて自ら命を絶つことを決意します。
金融屋の金子から渡された銃を手に、彼は暗い池の中へと入っていきました。しかし彼の行動を察知した茶沢の必死の叫びが、彼の心を激しく揺さぶります。
絶望の底で、住田はどのような決断を下すのか。
彼がどのような表情で走り出し、どのような言葉を叫ぶのか、その心を揺さぶる結末の詳細は、ぜひご自身の目で確認してみてください。
本作を視聴する方法は、「『ヒミズ』を視聴・購読する方法」の欄で取り上げています。
【原作比較】映画と漫画の決定的違い

映画『ヒミズ』は、原作漫画の基本的な設定を踏襲しつつも、監督の独自の解釈によって多くの点が変更されています。
単なる実死写化ではなく、新たな作品として再構築されているため、両者には決定的な違いが存在します。
結末の違い
もっとも大きな違いは物語が提示する最終的な答えです。
原作漫画は、主人公の住田が自らの内面的な問題と向き合った末、救いのない選択肢に至るという、非常に重く絶望的な結末を迎えます。
一方で映画版はその結末を大きく変更しました。絶望の淵に立たされた主人公が、それでも生きる方向へと向かう可能性を描き出しています。
東日本大震災の反映
映画版は製作時期に発生した、東日本大震災の要素を物語の背景に組み込みました。
これにより原作が、個人の内面的な苦悩に焦点を当てていたのに対し、映画版は異なるテーマを持つようになります。
「震災後の社会でいかに希望を見出すか」という、より大きな社会的なテーマです。
キャラクター設定の変更
登場人物の設定も変更されています。
例えば、原作で住田の同級生だった夜野正造は、映画版では震災ですべてを失った中年のホームレスとして登場します。
これにより住田との関係性が対等な友人から、彼を見守る大人という構図に変わりました。
またヒロイン茶沢景子の家庭環境もより詳細に描かれ、彼女が住田に共感する理由が強化されています。
「怪物」の有無
原作漫画では、住田の心象風景を象徴する「怪物」がたびたび登場します。これは彼の内面的な葛藤を視覚化していました。
映画版ではこの超現実的な要素は排され、より現実的な人間ドラマとして物語が進行します。
表現のトーン
作品全体の雰囲気も異なります。
原作が静かで内省的な狂気を描いているのに対し、映画版は園子温監督特有の表現が前面に出ています。
感情を爆発させるような激しい絶叫や暴力描写です。この演出の違いが、作品の印象を大きく左右しています。
原作結末の考察「決まってるんだ」の意味

原作漫画の結末で、主人公の住田は自殺を選びます。
その直前に住田の前に現れる「怪物」が告げる「決まってるんだ」というセリフは、作品のテーマを理解する上で非常に重要なキーワードです。
このセリフには、複数の解釈が存在します。
運命決定論的な絶望
ひとつ目の解釈は、住田の人生が最初から破滅するように運命づけられていたという考え方です。

住田がどれほど「普通」であろうと努力しても、育った環境や父親殺しという現実からは逃れられません。
最終的に絶望的な結末を迎えることは避けられなかった、という諦観を示しています。
住田自身が自分に言い聞かせていた希望を、内なる怪物が否定するシーンです。
自己肯定感の完全な崩壊
もうひとつの解釈は住田の内面的な問題です。
住田は「普通ではない」自分を受け入れられず、「父親と同じクズになってしまった」という自己嫌悪に囚われます。
周囲には茶沢や夜野といった理解者がいたにもかかわらず、彼らの救いの手を最終的に拒絶しました。
自分自身で「自分は救われる価値がない」と断定してしまった結果が、「決まってるんだ」という言葉に凝縮されているとも考えられます。
いずれにせよ、このセリフは原作における救いのない結末と、主人公の深い絶望を象徴しています。
原作ラスト「何それ?」結末に隠されたテーマ

ラストの「何それ?」というフレーズは、原作漫画の雑誌連載時の最終回において、ヒロインの茶沢景子が発した最後のセリフです。
これは主人公の住田が自ら命を絶った現場を発見した際の、彼女の呆然としたつぶやきでした。
不条理と虚無感の提示
「何それ?」、この一言が持つテーマは強烈な「不条理」と「虚無感」です。
茶沢は物語を通じて、絶望に陥る住田を必死に励まし、彼と共に生きる未来を信じて行動し続けました。
彼女の存在は読者にとって唯一の希望でした。しかし住田が最終的に彼女の救いの手を振り払い、死を選んだのです。
これにより茶沢のすべての努力は意味を失ってしまいます。

つまり「何それ?」という言葉は、論理的な結末や感情的なカタルシス(浄化)を意図的に拒否するものです。
どれほど必死に努力しても、すべてが報われないことがあるという冷徹な現実を読者に突きつけます。そして深い余韻と、やるせなさを残す役割を果たしました。
なおこの衝撃的なセリフは、単行本化の際に変更されています。ですが、原作の持つ容赦のない世界観を象徴する言葉として、今なお多くの読者の記憶に残っています。
園子温監督が描く絶望と希望

園子温監督は、映画版『ヒミズ』において、原作漫画の持つ冷徹な絶望感を継承しました。そしてそれを情熱的なエネルギーで、塗り替えることにより独自の希望の物語を構築しています。
園監督ならではの絶望描写
まず絶望の側面ですが、園監督の持ち味である生々しい演出が随所に見られます。
家庭内暴力や育児放棄といった過酷な現実は、登場人物たちの絶叫や激しい感情のぶつかり合いを通じて、観客に強烈な痛みを与えます。
原作の静かな狂気とは異なり、目を背けたくなるほどの直接的な描写で、主人公たちが置かれた救いのない状況を強調しています。
絶望を突き破る希望の力
しかし本作の核心は、その絶望を突き破ろうとする希望の力です。
監督自身が製作中に東日本大震災を経験したことで、「絶望だけを描いてはいけない」「希望に負けた」と語っています。その言葉どおり、物語は原作とは異なる方向へ進むのです。

映画版では、主人公の住田は自ら死を選ぶのではなく、生きることを選択します。
このテーマを象徴するのが、ラストの「がんばれ」と叫び続けるシーンです。
当初は教師が口にする薄っぺらい言葉でしかなかった励ましが、地獄のような現実を経験した主人公自身の口から発せられます。そうすることで、力強い生命賛歌へと昇華されているのです。
絶望的な状況下でも、生きる意志を持つことの尊さを描いた点が、園子温監督が提示した本作の核心といえるでしょう。
茶沢景子はなぜホームレスになったのか?

この疑問は視聴者の方がよく抱く誤解のひとつですが、結論から言うと、作中で茶沢景子がホームレスになる事実はありません。彼女は物語の最後まで両親の家で暮らしています。
誤解が生まれる理由
ではなぜ、このような誤解が生まれるのでしょうか。その理由は、茶沢景子の行動と、映画の登場人物構成にあります。
まず茶沢景子は、両親から日常的にひどい虐待を受けており、実家は彼女にとって安らげる場所ではありませんでした。
そのため彼女は、精神的な逃避場所として主人公・住田のもとに通い詰めます。そしてまるで住田の貸しボート屋に、入り浸るような生活を送るのです。

茶沢が貸しボート屋に入り浸る姿が、家に帰る場所がないかのように見える一因です。
対比的に描かれる存在
また映画には、実際にホームレス生活を送る人物たちが登場します。
住田の敷地内にテントを張って暮らす夜野正造をはじめとする中年の人々です。彼らは東日本大震災によって家や仕事を失った被災者として描かれており、物語の重要な役割を担います。
このように映画『ヒミズ』では、「震災によって物理的な家を失った大人たち」と、「家庭環境によって精神的な居場所を失った少女(茶沢)」が対比的に描かれています。

茶沢は住む家自体はありますが心の拠り所がなく、住田の存在だけが唯一の希望となっていたのです。
本作に関するよくある質問|茶沢「その後」など

Q1. 茶沢の「その後」は描かれていますか?
映画版では、茶沢景子の明確な「その後」は描かれていません。
物語は主人公の住田が、自らの過去と向き合う大きな決断をし、茶沢と共に未来へ向かって力強く一歩を踏み出す場面で幕を閉じます。
これはたとえ困難な道であっても、ふたりで共に歩んでいこうとする、希望に満ちた結末です。
しかしふたりの具体的な将来がどうなったのかについては、観客の想像に委ねられています。
Q2. 作中の「何それ」というセリフが印象的ですが、どういう意味ですか?
「何それ?」というセリフは、映画版ではなく原作漫画の結末(雑誌連載時)で使われたものです。
原作漫画では、主人公の住田は映画とは異なり自殺してしまいます。ヒロインの茶沢が彼の死体を発見した際に漏らす言葉が「何それ?」でした。
セリフ「何それ」には、それまでの必死の努力やぶつけ合った感情が、主人公の死によってすべて無意味になったという強烈な虚無感や不条理さが込められています。
理解不能な現実を前にした呆然とした感情の表れといえるでしょう。
Q3. 鬱映画だと聞きましたが、見るのがつらいですか?
はい、本作は一般的に「鬱映画」に分類されることが多く、視聴には精神的な体力を要する作品です。
全体を通して、次のような重く痛々しい描写が続きます。
- 家庭内暴力
- 親による虐待
- いじめ
- 殺人…など
特に主人公が追い詰められていく過程は非常に過酷で、気分が落ち込む可能性が高いです。
ただし前述のとおり、映画版の結末には希望が持たせてあります。
原作漫画の持つ完全な絶望とは異なるため、後味の悪さだけで終わるわけではありません。ですが視聴する際は心構えが必要でしょう。
映画『ヒミズ』のあらすじとポイントの総括

映画『ヒミズ』は、観る者に絶望と希望という重いテーマを突きつけます。映画と原作、ふたつの異なる結末は、私たちに「生きること」の意味を改めて問いかけるでしょう。
それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。
- 『行け!稲中卓球部』で知られる古谷実の漫画が原作
- 監督・脚本は『冷たい熱帯魚』の園子温
- 東日本大震災を受け、当初の脚本から大幅に変更された作品
- 主人公は「普通」に生きることを切望する15歳の少年・住田祐一
- ヒロインは住田に心酔し、自身も虐待を受ける茶沢景子
- 物語は住田が衝動的に父親を殺害したことで急展開する
- 住田は自らの人生を「オマケ人生」と名付け、悪党を探し始める
- 映画版の結末は、原作の自殺とは異なり希望を描いている
- 原作の結末は「決まってるんだ」という言葉に象徴される絶望
- 連載時の原作ラストのセリフ「何それ?」は不条理さを表現
- 映画版は「がんばれ」と叫ぶシーンで生きる意志を力強く描く
- 主演の染谷将太と二階堂ふみはヴェネチア国際映画祭で新人賞を受賞
- 原作ファンからは映画の改変点について賛否両論がある
- 園子温監督作品特有の激しい暴力描写や演出が特徴
- 視聴には精神的な体力を要する重いテーマを扱う鬱映画である
最後までご覧いただきありがとうございました。映画コンテンツライターのヨミトがお届けしました。(プロフィールはこちら)
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