
この記事でわかること
✓ 戊辰戦争下の新発田藩で罪人たちが決死隊となる物語の概要
✓ 史実を基にした時代背景と藩が置かれた複雑な状況
✓ 登場人物たちの壮絶な運命と衝撃的な結末(ネタバレ含む)
✓ リアルなアクションや人間ドラマといった作品の主な見どころ
2024年最大の注目作のひとつ、映画『十一人の賊軍』。鬼才・白石和彌監督が山田孝之・仲野太賀のW主演で描く、激動の戊辰戦争を舞台にした壮絶な時代劇アクションです。
「なぜ罪人たちが決死隊に?」
「新発田藩の裏切りとは?」
「彼らを待ち受ける衝撃の運命とは?」
さらに物語の元となった笠原和夫の「幻のプロット」や、複雑な時代背景、個性豊かな登場人物と豪華キャスト、作品の見どころや評価まで、本作を深く理解するための情報を網羅しました。

この記事を読めば、『十一人の賊軍』のすべてがわかります!
映画『十一人の賊軍』のあらすじと基本情報
2024年公開の注目作、映画『十一人の賊軍』。この章では次のことを取り上げ、網羅的に解説していきます。
- 『十一人の賊軍』の基本情報
- 本作の元ネタ・原案を解説
- 舞台設定|戊辰戦争下の新発田
- 十一人の賊軍 あらすじ(ネタバレなし)
- 主要登場人物と豪華キャスト紹介
『十一人の賊軍』の基本情報
本作は2024年11月1日に公開された、日本の時代劇アクション映画です。監督は「孤狼の血」シリーズで知られる白石和彌氏が担当しました。

実力派俳優の山田孝之さんと仲野太賀さんがW主演を務めることで話題を集めています。
戊辰戦争という激動の時代を背景に、壮大なスケールで物語が描かれます。
作品概要と鑑賞時の注意点
上映時間は155分と、約2時間半にわたる長編作品になっています。配給は東映で、レイティングはPG12指定です。
一部劇場ではDolby Cinema形式での上映も実施され、より迫力のある映像と音響を楽しむことができました。
また公開に先立ち、第37回東京国際映画祭のオープニング作品としてワールドプレミア上映されたことでも注目されました。
鑑賞を検討される場合、上映時間が長めである点にご注意ください。加えて、PG12指定のとおり暴力的なシーンや表現が含まれる点にも注意が必要です。
映画情報概要表
項目 | 詳細 |
タイトル | 『十一人の賊軍』 |
監督 | 白石和彌 |
W主演 | 山田孝之、仲野太賀 |
劇場公開日(日本) | 2024年11月1日 |
上映時間 | 155分 |
レイティング(映倫) | PG12 |
配給 | 東映 |
原案 | 笠原和夫 |
脚本 | 池上純哉 |
本作の元ネタ・原案を解説

映画『十一人の賊軍』は完全なオリジナル作品ではなく、元となるアイデアが存在します。
それは「仁義なき戦い」シリーズなどを手掛けたことで知られる伝説的な脚本家、故・笠原和夫氏が約60年前に遺した「幻のプロット」です。
笠原氏は1964年ごろ、戊辰戦争下の新潟・新発田藩を舞台に、藩の命令で罪人たちが決死の戦いに挑むという物語を構想しました。
このプロットには勝者だけが正義なのかという問いや、時代の波に翻弄される人々への視点が込められていたといわれます。
映画化が実現しなかった経緯
しかし当時の東映上層部は、全員が死ぬという悲劇的な結末などを理由に映画化を認めませんでした。
伝えられる話によりますと、笠原氏は激怒して完成していた脚本を破り捨ててしまい、企画は実現に至らなかったそうです。このようにして「幻のプロット」となっていた構想です。
60年の時を経て映画化へ
しかし白石和彌監督がこの話を知り、現代にこそ描くべきテーマがあると感じたことから、映画化企画が実現する運びとなりました。
元の脚本は現存しないため、脚本家の池上純哉氏が残されたプロット(物語の構成案)を基に新たに脚本を執筆しています。
そのため映画のストーリーや結末は、笠原氏が当初考えていたものとまったく同じではない可能性はあります。
ただ権力や時代の不条理に立ち向かう人々を描くという、笠原氏ならではの骨太なテーマは、本作にも色濃く受け継がれているといえるでしょう。
舞台設定|戊辰戦争下の新発田

この物語の舞台となるのは、1868年(慶応4年/明治元年)の日本です。江戸幕府の時代が終わりを迎え、新しい明治政府が樹立されようとしていた、まさに激動の時代でした。
日本国内では、新政府を中心とする勢力(官軍)と、旧幕府を支持する勢力(賊軍)との間で「戊辰戦争」と呼ばれる大きな内戦が起こっていました。
舞台となる新発田藩
本作の主な舞台は、越後国(現在の新潟県)にあった新発田(しばた)藩です。新発田藩は比較的規模の小さな藩であり、戊辰戦争においては非常に難しい立場にありました。
藩が置かれた複雑な状況
周囲の大きな藩が参加する旧幕府側の「奥羽越列藩同盟」からの強い圧力により、本意ではないものの同盟に加わらざるを得ない状況に追い込まれます。
しかし藩の実権を握る家老・溝口内匠は、新政府軍が有利であると判断しました。

溝口内匠は藩を戦火から守るために同盟を裏切り、新政府軍側につくことを画策します。
城下には同盟軍が駐留し、すぐ近くまで新政府軍が迫るという、一触即発の緊張状態が物語の背景です。
この新発田藩の動きは史実にもとづいており、映画ではこの歴史的な出来事をベースに、オリジナルの物語が展開されます。
物語のあらすじ(ネタバレなし)

映画『十一人の賊軍』は、戊辰戦争という日本の大きな転換期が背景です。ある小藩で死罪を待つ身であった罪人たちが、藩の存亡をかけた極秘の任務に挑む姿を描く時代劇アクションとなります。
決死隊結成の経緯
物語は新政府軍と旧幕府軍の板挟みとなり、絶体絶命の危機に瀕した新発田藩から始まります。
藩を戦火から守りたい家老の溝口内匠は、危険な計画を思いつきました。それは、藩内で捕らえられていた罪人たちを集め、臨時の「決死隊」を編成することだったのです。
与えられた任務と展開
彼らに与えられた任務は、藩境にある砦で、迫りくる新政府軍の進軍を数日間だけ食い止めるという非常に困難なものでした。
もし任務を成功させ、生き残ることができれば、彼らは無罪放免されるという約束が交わされます。
妻のために戦う駕籠かき人足の政(山田孝之)や、藩のために剣の腕を振るう武士・鷲尾兵士郎(仲野太賀)がいます。
さらにはイカサマ博徒や火付け犯など、様々な過去を持つ個性的な罪人たちも、この無謀とも思える作戦に参加することになりました。
寄せ集めの彼らが圧倒的な戦力を持つ敵を相手に、どのように戦い、生き抜こうとするのか。裏切りや葛藤が渦巻くなかで壮絶なドラマが繰り広げられていきます。
主要登場人物と豪華キャスト紹介

映画『十一人の賊軍』の大きな魅力のひとつとして、個性あふれる登場人物たちと、彼らを演じる実力派揃いのキャスト陣が挙げられます。
物語の中心は、死罪を待つ身でありながら決死隊として戦うことになる罪人たちです。しかし彼らを取り巻く人物たちも、物語に深みを与えています。
W主演と決死隊メンバー
W主演を務めるのは山田孝之さんと仲野太賀さんです。
山田さんは、妻を藩士に手ごめにされた怒りから侍殺しの罪を犯した駕籠かき人足・政(まさ)を演じ、生への執着と複雑な心情を表現します。
仲野さんは剣術道場の実直な道場主でありながら、藩命により罪人たちを率いることになる鷲尾兵士郎(わしおへいしろう)役を担当。武士としての誇りと現実との間で葛藤する姿を見せます。
罪人役の多彩なキャスト陣
決死隊となる罪人たちにも、多彩なキャストが集結しました。
イカサマ博徒・赤丹(あかたん)役に尾上右近さん、火付けの罪を犯した元女郎・なつ役に鞘師里保さん、政を兄のように慕う花火師の息子・ノロ役に佐久本宝さんが配役されています。
女犯の罪を犯した坊主・引導(いんどう)役に千原せいじさん、密航を企てた医師の息子・おろしや役に岡山天音さんがキャスティングされました。
そして剣術の達人である謎多き老人・爺っつぁん(じっつぁん)役は本山力さんが演じるなど、一人ひとりが強烈な個性を持っているのです。
物語の鍵を握る人物たち
さらに藩の実権を握り冷徹な策略を巡らす家老・溝口内匠(みぞぐちたくみ)役を阿部サダヲさんが怪演します。
決死隊の隊長となる若き藩士・入江数馬役には野村周平さん。彼らと対峙する新政府軍の参謀・山縣狂介(やまがたきょうすけ)役に玉木宏さんが出演するなど、脇を固める俳優陣も非常に豪華な顔ぶれです。
表「十一人の賊軍 俳優と役割」
登場人物名 | 俳優名 | 判明している罪状・背景・技能 |
政(まさ) | 山田孝之 | 侍殺し(妻の仇討ち) / 駕籠かき人足 |
鷲尾兵士郎(わしお へいしろう) | 仲野太賀 | (罪人ではない) / 剣術道場主(直心影流)、決死隊指揮官(後に賊軍へ) |
赤丹(あかたん) | 尾上右近 | 賭博罪(イカサマ博徒、武士から金銭詐取) / 銃を使用 |
なつ | 鞘師里保 | 放火(男への恨み) / 元女郎 |
ノロ | 佐久本宝 | (罪状不明) / 花火師の息子、爆薬(焙烙玉)を使用、石油発見 |
引導(いんどう) | 千原せいじ | 姦通・仏教戒律違反 / 僧侶、非戦闘的 |
おろしや | 岡山天音 | 密航(ロシアへ) / 医者の息子、銃を使用 |
三途(さんず) | 松浦祐也 | (罪状不明) / 百姓 |
二枚目(にまいめ) | 一ノ瀬颯 | 姦通(侍の妻と) / 色男、銃を使用、自己犠牲 |
辻斬(つじぎり) | 小柳亮太 | 辻斬り / 巨漢の浪人、爆死 |
爺っつぁん(じっつぁん) | 本山力 | 強盗 / 高齢の剣術家(長州出身)、東映剣会所属俳優 |
表 「主要な脇役」
登場人物名 | 俳優名 | 役割・所属 |
溝口内匠(みぞぐち たくみ) | 阿部サダヲ | 新発田藩 城代家老 |
山縣狂介(やまがた きょうすけ) | 玉木宏 | 新政府軍(官軍) 参謀 |
入江数馬(いりえ かずま) | 野村周平 | 新発田藩士 / 決死隊隊長 / 加奈の婚約者 |
溝口加奈(みぞぐち かな) | 木竜麻生 | 溝口内匠の娘 / 入江数馬の婚約者 |
仙石善右エ門(せんごく ぜんえもん) | 音尾琢真 | 新発田藩士(政に殺害される) |
色部長門(いろべ ながと) | 松角洋平 | 奥羽越列藩同盟(米沢藩士) |
斉藤主計(さいとう かずえ) | 駿河太郎 | 新政府軍(官軍) |
岩村精一郎(いわむら せいいちろう) | 浅香航大 | 役割・所属 |
水本正鷹(みずもと まさたか) | ナダル | 新発田藩 城代家老 |
ネタバレあり!『十一人の賊軍』あらすじ詳細

この章からは次のことを取り上げて、『十一人の賊軍』の世界を深掘りしていきます。
- 詳細なあらすじ|裏切りと死闘(ネタバレ注意)
- 結末の詳細|賊軍たちの運命と生き残り
- 見どころ・魅力|アクションと人間ドラマ
- 白石監督によるリアルなバイオレンス描写
- キャスト評価と全体の感想・評価まとめ
詳細なあらすじ|裏切りと死闘(ネタバレ注意)
ここからは、映画『十一人の賊軍』の物語の核心部分、結末を含む詳しいあらすじをご紹介します。まだ映画をご覧になっていない方で、ネタバレ情報を避けたい場合はご注意ください。
家老の策略と決死隊の派遣
物語は、新発田藩の家老・溝口内匠が、戊辰戦争の戦火から藩を守るために大きく動き出します。彼は奥羽越列藩同盟を裏切り、新政府軍(官軍)に寝返るという密約を結びました。
しかし城下には同盟軍が駐留しており、すぐに寝返ることはできません。そこで溝口は時間稼ぎと口封じを兼ねて、藩内の罪人たちに「成功すれば無罪放免」というウソの約束をしました。
そして鷲尾兵士郎らとともに最前線の砦へ送り込み、官軍の足止めをさせます。
砦での戦い|捨て駒たちの抵抗
砦に送られた政(山田孝之)ら罪人たちと兵士郎(仲野太賀)は、自分たちが捨て駒であるとは知りません。彼らは官軍との壮絶な戦いに身を投じることになります。
初めは寄せ集めで仲間割れも絶えませんでしたが、ノロ(佐久本宝)が作る焙烙玉(手榴弾のようなもの)や、剣術の達人である爺っつぁん(本山力)の活躍がありました。

加えて、兵士郎の指揮によって、圧倒的な戦力差にもかかわらず激しく抵抗します。
裏切りの発覚と決死隊の決意
しかし戦闘の最中、藩士たちの会話から衝撃の事実を知ります。それは、自分たちが任務後に処刑される運命にあるということでした。
裏切りを知り絶望する罪人たち。ですが兵士郎の武士としての覚悟や、過酷な状況下で芽生えた奇妙な仲間意識から、最後まで戦い抜くことを決意しました。
激化する戦闘と仲間たちの犠牲
官軍の追撃をかわすために橋を爆破し、さらには発見した石油を利用して官軍の本陣に夜襲をかけるなど、捨て身の作戦で敵に大きな損害を与えます。
この戦いのなかで、二枚目(一ノ瀬颯)や辻斬(小柳亮太)、そして爺っつぁんなど、多くの仲間が命を落としました。
決死隊の最期|果たされなかった約束
砦での激戦の末、ようやく藩からの任務完了を知らせる狼煙が上がります。しかし生き残った彼らを迎えに来たのは、溝口内匠が率いる新発田藩の討伐隊でした。
約束は反故にされ、赤丹(尾上右近)や引導(千原せいじ)は抵抗する間もなく射殺されてしまいます。
この非情な裏切りに激怒した兵士郎は、「俺が十一人の賊軍だ!」と叫び、刀を抜いて溝口に最後の戦いを挑むのです。
壮絶な斬り合いの末、溝口の卑怯な銃弾に倒れ、兵士郎も命を落とします。
一度は砦を離れた政も、この惨状を見て引き返しました。そして残った焙烙玉を抱え、敵兵もろとも自爆するという壮絶な最期を遂げます。
物語の結末|残された者たち
最終的に溝口の策略は成功し、新発田藩は戦火を免れました。しかし、父の非道を知った娘の加奈(木竜麻生)は自害します。

藩を守った代償として、溝口はもっとも大切なものを失うことになったのです。
決死隊のなかで生き残ったのは、なつ(鞘師里保)とノロ(佐久本宝)のふたりだけでした。
彼らは政の妻・さだ(長井恵里)のもとを訪れ、政の死と彼の想いを伝えます。そして溝口の娘から託された金を渡し、去っていくのでした。
結末の詳細|賊軍たちの運命と生き残り

壮絶な戦いの末、決死隊として砦を守った罪人たちの多くは命を落としました。藩から約束された無罪放免が果たされることはありませんでした。
彼らは藩の策略によって捨て駒にされます。官軍との激しい戦闘だけでなく、任務完了後には味方であるはずの新発田藩兵による討伐という、あまりにも過酷な運命を辿ることになるのです。
戦闘中に命を落とした者、橋の爆破で犠牲になった者、そして最後の討伐で無残に殺された者など、次々と仲間が減っていきました。
主要人物たちの最期
物語の中心人物であった政(山田孝之)と鷲尾兵士郎(仲野太賀)も、それぞれ壮絶な最期を迎えます。

兵士郎は藩への怒りから自ら「十一人の賊軍」と名乗り、最後まで誇りを捨てずに戦い抜きました。
政は生き残った仲間を逃がすため、敵を道連れに自ら犠牲となる道を選びます。この結末は、笠原和夫氏による元々の原案にあったとされる「全員討ち死に」とは異なるものです。
それでも権力に利用され翻弄される個人の無力さと、時代の非情さを強く印象付けるものとなっています。
生き残った者たち
しかし全員が命を落としたわけではありませんでした。決死隊のなかで、戦闘能力が高いとはいえない立場だった、なつ(鞘師里保)とノロ(佐久本宝)のふたりが奇跡的に生き残ります。
物語の最後、彼らは政の妻さだ(長井恵里)のもとを訪れ、政の死と彼の想いを伝え、溝口の娘から託された金を渡します。
そしてふたりは新たな人生を歩みだすかのように、町の雑踏の中へと消えていきました。
黒幕のその後
一方、藩を守るという目的は果たした家老・溝口内匠(阿部サダヲ)。しかしその代償としもっとも大切な娘を失うという、彼自身の悲劇も描かれました。
見どころ・魅力|アクションと人間ドラマ

本作『十一人の賊軍』の大きな見どころは、観る者の目を釘付けにする激しいアクションシーンと、登場人物たちが織りなす熱い人間ドラマが見事に組み合わされている点です。

メガホンを取った白石和彌監督は、リアルでときに過激な描写を得意としています。
本作でもその持ち味が存分に活かされているでしょう。
加えて、脚本家の池上純哉氏が、笠原和夫氏の遺したプロットを基に、現代の観客の心にも響くような深いドラマを描き出しました。
迫力満点の戦闘描写
アクション面ではワイヤーやCGを極力使わず、俳優たちの身体能力を活かした泥臭く生々しい殺陣(たて)が繰り広げられます。
刀がぶつかり合う金属音、雨や泥にまみれての斬り合い、そして登場人物たちの息遣いまでが生々しく伝わるでしょう。
仲野太賀さん演じる鷲尾兵士郎の鬼気迫る剣さばきは、特に見事です。また殺陣の専門家である本山力さん演じる爺っつぁんの流れるような槍術と剣術は必見といえます。
焙烙玉(ほうろくだま)や石油を使った大規模な爆破シーン、大砲や銃といった近代兵器も登場。時代劇でありながら迫力満点の戦闘スペクタクルが楽しめます。

一部レビューではその音響効果の高さから、音響設備の良い映画館での鑑賞が強く勧められています。
心揺さぶる人間ドラマ
その一方で、極限状況に置かれた人々の心の動きを描く人間ドラマも本作の重要な魅力です。
最初は自己中心的でバラバラだった罪人たちが、裏切りや仲間の死を経験するなかで、徐々に奇妙な連帯感を深めていく様子は胸を打ちます。
山田孝之さん演じる政の、何としてでも生き延びて妻の元へ帰ろうとする執念と、土壇場で見せる人間性。
仲野太賀さん演じる兵士郎の武士としての純粋な正義感と、裏切りに対する怒り、そして最後の覚悟。
阿部サダヲさん演じる溝口内匠の、藩を守るためなら手段を選ばない冷徹さと、その裏にあるであろう苦悩。
それぞれの立場からの「正義」が激しくぶつかり合い、「本当に正しいことは何か」を観る者に問いかけます。
見応えのある作品として
このように手に汗握るアクションと、登場人物たちの魂のぶつかり合いともいえる骨太なドラマが見事に両立しています。
この点が本作を単なる時代劇アクションに留まらない、見応えのある作品にしているといえるでしょう。
白石監督によるリアルなバイオレンス描写

本作『十一人の賊軍』では、メガホンを取った白石和彌監督の特徴ともいえる、リアルで生々しいバイオレンス描写が多く見られます。

白石監督はこれまでの作品でも、人間の痛みや社会の暗部を正面から描くことに定評があります。
本作でもそのスタイルは貫かれているといえるでしょう。
戊辰戦争という混沌とした時代の空気と、罪人たちが繰り広げる文字通りの死闘を、観客に強く印象付ける演出がなされています。
具体的な描写内容
具体的には刀による斬り合いでの人体の損壊や、大量の血が流れるシーン、さらには凄惨な処刑場面などが、容赦なく映し出されます。
例えば、阿部サダヲさん演じる家老・溝口内匠が、ある目的のために顔色ひとつ変えずに刀を振るい続ける。このシーンは、その冷徹さと相まって観る者に強烈なインパクトを与えます。
こうした描写は単にショッキングなだけでなく、戦いの過酷さや命の重さを逆説的に際立たせる効果も持っていると考えられます。
鑑賞時の注意点
ただしこれらの暴力的な描写は、本作がPG12指定となっている理由のひとつでもあります。そのため観る人によっては、目を背けたくなる可能性も否定できません。
実際にSNSやレビューサイトでは、「グロテスクだ」「過激すぎる」といった感想も見受けられます。
これから映画を見る際は、こうした直接的な暴力描写が含まれていることを、あらかじめ理解しておきましょう。
キャスト評価と全体の感想・評価まとめ

映画『十一人の賊軍』は、その骨太なストーリーや迫力あるアクションシーンと共に、出演したキャスト陣の熱演が高く評価されています。

一方で作品全体としては、いくつかの点で評価が分かれる部分もあるようです。
まずキャストについてですが、W主演の山田孝之さんと仲野太賀さんの演技は、多くの観客から絶賛されています。
山田さんのもつ独特の存在感や、仲野さんの鬼気迫る表情と見事な殺陣は、物語に強い説得力を与えています。
また物語の鍵を握る家老役の阿部サダヲさんの怪演や、決死隊メンバーである爺っつぁん役の本山力さんの圧巻の殺陣なども、非常に高く評価されています。
その他、佐久本宝さんや鞘師里保さんをはじめとする若手からベテランまで、豪華な俳優陣がそれぞれの役柄を魅力的に演じ切っている点も、本作の魅力として挙げられます。
作品全体への評価|肯定的な声
作品全体の感想としては、次のような肯定的な声が多く寄せられています。
「非常に面白かった」
「熱い気持ちになった」
「155分があっという間だった」…など
特に東映の伝統的な集団抗争時代劇を現代に蘇らせた点や、迫力あるアクション、音響効果を評価する意見が目立ちます。
映画館での鑑賞を強く勧める声も少なくありません。
「正義とは何か」「生きることの意味」といった重いテーマを内包しており、深く考えさせられたという感想も見受けられます。
賛否両論のポイント
その一方で155分という上映時間に対しては、「長すぎる」「中盤が少し退屈に感じた」といった指摘もあります。
また前述のとおり、白石監督特有の生々しいバイオレンス描写については、苦手意識を持つ人もいるようです。
一部のお笑い芸人キャストの起用が作品の雰囲気に合わないと感じる声や、戦闘シーンの展開にご都合主義的な部分があるという意見も見られました。
結末に関しても、カタルシスが得られるものではないため、「後味が悪い」「見ていてしんどい」と感じる観客もいるようです。
感想・評価まとめ
総じて『十一人の賊軍』は、見応えのある時代劇エンターテインメントとして多くの観客から支持されています。
しかしその一方で暴力描写やストーリー展開、上映時間などについては、個人の好みによって評価が分かれる作品といえるでしょう。
映画『十一人の賊軍』あらすじとポイントまとめ

映画『十一人の賊軍』のあらすじや背景、結末などを徹底解説しました。

本作は迫力のアクションと「正義とは何か」を問いかける骨太な人間ドラマが融合した点が大きな魅力です。
キャストの熱演も見どころですが、一部描写や長さには様々な意見があります。この記事を参考に、ぜひご自身の目で彼らの壮絶な生き様とその結末を確かめてみてください。
最後にポイントを箇条書きでまとめます。
- 2024年公開、白石和彌監督による時代劇アクションである
- 山田孝之・仲野太賀がW主演、豪華キャストが集結した
- 上映時間は155分、PG12指定、配給は東映だ
- 脚本家・笠原和夫が60年前に構想した幻のプロットが原案である
- 戊辰戦争下の新発田藩が舞台、史実を基にしたフィクションとなっている
- 新政府軍と旧幕府軍の板挟みとなった小藩の苦境を描く
- 罪人たちが藩の命令で砦を守る「決死隊」となる
- 無罪放免を条件に過酷な戦いへ身を投じる物語だ
- 藩の裏切りと壮絶な死闘の末、多くの決死隊員が命を落とす
- 生き残りはなつとノロのみ、黒幕の家老も罰を受ける結末を迎える
- 見どころはワイヤー等に頼らないリアルな殺陣と迫力のアクションだ
- 罪人たちの葛藤や絆、それぞれの正義を描く人間ドラマも魅力である
- 賛否両論あるも、見応えある作品との評価が多い
最後まで見ていただきありがとうございました。