『両刃の斧』あらすじと評価|観る前の魅力と、観た後に語りたい結末の謎

『両刃の斧』あらすじと評価|観る前の魅力と、観た後に語りたい結末の謎

この記事でわかること

15年前の未解決事件を軸にした物語の概要と、作品が持つ魅力

物語の主要な登場人物たちの人物像と、その複雑な人間関係

事件の真犯人や動機、そして衝撃的な結末に至るまでの詳細な物語

タイトルに込められた深い意味や、視聴者の間で賛否両論となった評価

『両刃の斧』のあらすじが気になっているけれど、どこまで知っていいか迷っていませんか?

この記事の筆者ヨミト
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「両刃の斧」は単なるサスペンスとして片付けられない、家族の愛と正義を問う重厚な物語です。

ここでは、まだ見ていない方も安心して読めるネタバレなしのあらすじから解説。さらに物語の核心に迫る登場人物や衝撃の結末、真犯人の正体まで、あなたの「知りたい」に徹底的に答えます。

なぜこの物語は「最高傑作」と「後味が悪い」という両極端の評価を受けるのか。

読み終える頃には、その理由がきっとわかるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

『両刃の斧』のあらすじと作品の全体像

この章では次の構成順にて、物語の前提となる基本情報や登場人物、そしてネタバレなしで楽しめるあらすじと魅力について解説します。

  • ドラマ&原作『両刃の斧』とは?作品の基本情報
  • 物語全体のあらすじと3つの魅力【ネタバレなし】
  • ドラマの登場人物とキャスト相関図
  • 『両刃の斧』はどこで読める?どこで観られる?

ドラマ&原作『両刃の斧』とは?作品の基本情報

『両刃の斧』は、作家・大門剛明さんの小説を原作とした、重厚なサスペンス作品です。

物語の中心となるのは、15年前に娘を殺された元刑事と、彼を師と仰ぐ後輩刑事です。ふたりが未解決事件の真相に迫る過程で、家族の愛や正義のあり方を深く問いかける内容となっています。

原作小説とドラマ版について

原作は司法制度や社会問題を、鋭く描くことで知られる大門さんによって、2019年に中央公論新社から文庫書き下ろし作品として刊行されました。

一方のドラマ版は、2022年にWOWOWの「連続ドラマW」枠で全6話で放送されています。そのクオリティの高さが、大きな話題を呼びました。

以下に、原作とドラマの基本情報をまとめます。

媒体原作小説テレビドラマ
正式名称両刃の斧連続ドラマW 両刃の斧
著者/監督大門剛明森義隆
出版社/放送局中央公論新社WOWOW
刊行/放送年2019年2022年
形式/話数中公文庫(336ページ)全6話
主要スタッフ脚本:鈴木謙一、音楽:大間々昂
主演柴田恭兵、井浦新

原作の持つ骨太な物語を、実力派のキャストとスタッフが映像化しています。多くの視聴者の心を揺さぶる作品として高く評価されました。

物語全体のあらすじと3つの魅力【ネタバレなし】

単語帳に「あらすじ」の文字が印字

ドラマ『両刃の斧』は、ひとりのベテラン刑事・柴崎を襲った、あまりにも残酷な悲劇から幕を開けます。15年前、彼の愛する長女が何者かに殺害されるという事件が起きました。

懸命な捜査もむなしく事件は迷宮入りとなり、柴崎は失意のうちに警察を退職しています。

しかし15年の時を経て、新たな情報を基に事件の再捜査が決定したことで、止まっていた運命の歯車が再びきしみ始めます。

柴崎を師と仰ぐ後輩刑事・川澄も捜査に加わり、ついに犯人と思われる男の存在にたどり着くのです。

ところが事態は思わぬ方向へ。独自に真相を追っていたはずの柴崎自身に、殺人容疑がかけられてしまいます。

尊敬する恩人は、娘の復讐を果たしたのでしょうか。

この記事の筆者ヨミト
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ふたりは「信じる者」と「疑われる者」という、あまりにも過酷な立場で対峙することになります。

心を揺さぶる3つの魅力

『両刃の斧』が単なるサスペンスで終わらない理由は、大きく分けて3つの魅力にあります。

■魅力1
1つ目は、ラストまで息をのむ、予測不能なストーリー展開です。

多くの視聴者が「この人が犯人に違いない」と確信するたびに、物語はその予想を鮮やかに裏切ります。

巧みに張り巡らされた伏線が、観る者を最後の瞬間まで惹きつけて離しません。

■魅力2
2つ目は、心を揺さぶる重厚な人間ドラマです。娘を失った父親の悲しみ、夫を信じる妻の祈り、そして家族を守るための究極の選択。

本作は登場人物一人ひとりの「愛」が複雑に絡み合い、時に切ない悲劇を生み出す、まさに慟哭のヒューマンドラマでもあるのです。

■魅力3
そして3つ目の魅力は、実力派俳優陣による魂のこもった演技です。

W主演の柴田恭兵さんと井浦新さんをはじめ、脇を固めるキャストたちの熱演は見逃せません。

静かな怒りをたたえる柴田さんと、正義と恩義の間で苦悩する井浦さんが対峙するシーンは、息をのむほどの緊張感に満ちています。

ドラマの登場人物とキャスト相関図

たくさんの人物のフィギアの画像(登場人物のイメージ)

『両刃の斧』の物語に深い奥行きと説得力を与えているのは、ベテランから注目の若手まで、豪華な実力派俳優たちが演じる登場人物たちです。

ここではそれぞれが心に傷を負った、物語の鍵を握る人物とキャスト陣をご紹介します。

物語の鍵を握る登場人物たち

■柴崎佐千夫(演:柴田恭兵)
15年前に長女を殺害された元刑事で、物語の中心人物です。

軽快な刑事役のイメージが強い柴田恭兵さんが、本作では静かな怒りと深い悲しみを内に秘めた父親を熱演。その重厚な演技は多くの視聴者の涙を誘い、「彼の最高傑作」との呼び声も高いです。

■柴崎三輪子(演:風吹ジュン)
柴崎の妻。ふたりの娘を失い、自らも重い病と闘いながら、夫を静かに見守ります。三輪子が胸の奥に秘めていた「ある秘密」が、物語の結末を大きく左右することになります。

■柴崎曜子(演:見上愛)
柴崎家の長女で、物語のすべての発端となる人物です。15年前に何者かによって殺害され、その未解決事件の真相を追うことが、父・柴崎と後輩・川澄の運命を大きく動かしていきます。

■柴崎和可菜(演:長澤樹)
柴崎家の次女。姉・曜子の死から2年後、自身も白血病によって17歳という若さでこの世を去りました。相次いで娘を失ったことが、柴崎夫婦の心に深い影を落としています。

■川澄成克(演:井浦新)
もうひとりの主人公で、柴崎に憧れて刑事になったという背景を持つ、実直な現役刑事です。

恩人を信じたい気持ちと、真実を追わねばならない刑事としての使命の間で揺れ動きます。彼の苦悩が物語の大きな推進力となるでしょう。

■川澄日葵(演:奈緒)
川澄のひとり娘で、柴崎家を家族同然に慕っています。自身も警察官であり、父と柴崎の関係を案じながら、重厚な物語に希望の光をもたらそうとします。

■山田太士(演:坂東龍汰)
日葵の婚約者で、将来を嘱望されるエリート刑事です。しかし彼が子どもの頃に経験した悲劇的な事件が、15年前の未解決事件と意外な形で繋がっていきます。

■森下竜馬(演:黒田大輔)
15年前の事件の容疑者となる元警察官。多くの視聴者が「気持ち悪くて見事」と口を揃えるほどの怪演で、物語に言いようのない恐怖と不穏な空気をもたらしています。

複雑に絡み合う人間関係

両刃の斧の相関図
タップで拡大

この物語の相関図の中心には、師弟であり親子同然の絆で結ばれた柴崎と川澄がいます。しかし再捜査が始まったことで、その関係は「信じる者」と「疑われる者」へと一変してしまうのです。

さらに彼らを取り巻く家族、事件の鍵を握る婚約者の山田やストーカーの森下が複雑に絡み合います。

この記事の筆者ヨミト
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誰が敵で誰が味方なのか、最後までわからない緊張感を生み出しています。

『両刃の斧』はどこで読める?どこで観られる?

視聴方法のイメージ画像

『両刃の斧』の物語に触れる方法は、ドラマと原作小説の2つがあり、それぞれ多様なサービスで楽しむことが可能です。ここでは、具体的な視聴方法と購読方法をご紹介します。

ドラマ版の視聴方法

ドラマ版は、WOWOWでの放送後、多くの動画配信サービスで見放題配信されています。

主な動画配信サービス配信状況特徴(R7.7月時点)
Prime Video見放題初回30日間無料
U-NEXT見放題初回31日間無料
Hulu見放題
Netflix見放題
FOD見放題
WOWOWオンデマンド見放題WOWOWオリジナル作品

上記のように、多くのプラットフォームで視聴できます。特にPrime VideoやU-NEXTは無料お試し期間が設けられているため、期間をうまく利用すれば、実質無料で全話を鑑賞することもできます。

ただし配信状況は変更されることがありますので、最新の情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。

原作小説の購読方法

一方、原作小説を読みたい場合は、以下の方法があります。

■電子書籍
Kindle(Amazon)や楽天Kobo、コミックシーモアなど、主要な電子書籍ストアで購入して、すぐにスマートフォンやタブレットで読むことが可能です。

■紙の書籍
全国の書店はもちろん、Amazonや楽天ブックスといったオンラインストアでも手軽に購入できます。

ご自身のライフスタイルに合わせて、ドラマから入るか、原作から深く味わうかを選んでみてはいかがでしょうか。

『両刃の斧』ネタバレあらすじと深掘り考察

ここからは次の構成順にて物語の核心に迫ります。未視聴の方はご注意ください。

  • ドラマの詳細なあらすじと衝撃の結末【完全ネタバレ】
  • 犯人は誰?なぜ?すべての謎への最終回答【最重要ネタバレ】
  • 【考察】『両刃の斧』に隠されたテーマとタイトルの意味
  • 【レビュー・評価】なぜ感動?なぜ「ひどい」?感想まとめ
  • 『両刃の斧』に関するQ&A(よくある質問)

ドラマの詳細なあらすじと衝撃の結末【完全ネタバレ】

ここからの内容は、ドラマ『両刃の斧』の物語の核心に触れる重大なネタバレを含みます。まだドラマを視聴されていない方は、十分にご注意ください。

再捜査の始まりと容疑者の浮上

物語は、15年前に刑事・柴崎の長女・曜子が殺害された未解決事件が、ある警察官の謎の自殺をきっかけに再捜査されるところから始まります。

柴崎を師と仰ぐ後輩刑事・川澄も捜査に加わり、青山警官の遺書に残された情報から、曜子のストーカーだった元警察官・森下が最有力容疑者として浮上するのです。

恩人への疑惑と深まる謎

しかし事態は誰もが予想しない方向へ急転します。逮捕直前に、その森下自身が公園で何者かに殺害されてしまうのでした。

さらに現場近くの防犯カメラに、柴崎の姿が映っていたことなどから、彼に森下殺害の嫌疑がかかります。

ふたりの娘を失った柴崎が、ついに復讐を果たしたのでしょうか。

この記事の筆者ヨミト
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恩人が殺人犯かもしれないという事実に、川澄は激しく動揺しますが、逮捕された柴崎は完全黙秘を貫きます。

これにより真相は、深い闇の中へと沈んでいくかに見えました。

衝撃の告白と悲しい真実

捜査が行き詰まる中、川澄の娘の婚約者である刑事・山田の隠された過去や、亡き曜子の意外な交際相手の存在など、新たな事実が次々と明らかになります。

物語はさらに複雑な様相を呈していくのです。

なぜ柴崎は黙り続けるのか。その謎を解く鍵は、病床にいる柴崎の妻・三輪子に託されることになりました。

物語の終盤、死期を悟った三輪子が病室で語り始めたのは、15年前に起きた事件の、あまりにも意外な真相でした。

三輪子の告白をきっかけに、川澄はすべてのピースを繋ぎ合わせます。そして柴崎が黙秘を続けた本当の理由と、2つの事件を貫くひとつの悲しい真実にたどり着くのです。

この結末は単純な復讐劇ではありません。愛するがゆえの嘘が、さらなる悲劇の連鎖を招いてしまった家族の物語を描いています。

犯人は誰?なぜ?すべての謎への最終回答【最重要ネタバレ】

「両刃の斧」イメージ画像2
イメージ|あらすじノオト

それでは2つの事件の真相と、多くの視聴者を悩ませた「真犯人」の正体について、全ての謎に答えていきましょう。

真犯人は次女。事件の全貌を徹底解説

15年前に長女・曜子の命を奪った真犯人、それはストーカーの森下ではなく、実の妹である次女・和可菜でした。

しかしこれは殺意ある「殺人」ではなく、不幸な偶然がいくつも重なって起きてしまった「事故」だったのです。

事件当日、和可菜はストーカー被害で元気をなくしていた姉の曜子を元気づけようと、彼女の部屋に隠れて驚かせようと計画します。

一方でストーカーに怯えていた曜子は、帰宅した際に部屋に人の気配を感じ、護身のために包丁を手にしてしまいました。

暗闇のなか、物音に驚いた曜子が包丁を落としてしまいます。

お互いを認識できないまま、落ちた包丁を拾おうとした際に、その刃が偶然にも曜子の首に致命傷を与えてしまったのです。

この悲劇の連鎖が、物語のすべての始まりでした。

なぜ次女は姉を殺めたのか

前述のとおり、次女・和可菜の行動に殺意は一切ありませんでした。彼女の動機は、大好きな姉を「驚かせて笑わせたい」という、純粋な姉妹愛からくるものです。

つまり和可菜の善意の行動と、曜子が抱いていたストーカーへの恐怖、そして暗闇という状況。これらの要素が最悪の形で組み合わさった結果、悲劇的な事故が起きてしまったといえます。

和可菜が姉を「殺めた」のではなく、あくまで「死なせてしまった」という点が、この物語のどうしようもない悲しさを際立たせています。

森下と山田が犯人と疑われた理由

物語の巧みな構成により、森下と山田はそれぞれ、視聴者が「この人物こそが犯人ではないか」と強く疑うように描かれていました。

まず森下については、実際に曜子のストーカーであり、過去にも脅迫などの犯罪歴があったため、動機をもつ最有力容疑者でした。

さらに、青山警察官が残した遺書によって名指しされたことで、彼が犯人であるという印象はほぼ確定的となりました。

一方、川澄の娘の婚約者である山田は、自身の母親が過去に森下によって殺害されていたという事実が判明します。そのため、森下に対して強い復讐心を抱いていました。

この記事の筆者ヨミト
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森下が殺害された夜に現場近くで目撃されていたことも、山田への疑惑を深める大きな要因となったのです。

このように、それぞれにもっともらしい理由があったため、多くの視聴者が巧みに誘導され、物語のサスペンス性が最後まで保たれることになりました。

【考察】『両刃の斧』に隠されたテーマとタイトルの意味

「両刃の斧」のテーマの図解

『両刃の斧』は、単なる犯人探しのサスペンスドラマではありません。

物語の奥深くには、観る者に対して「本当の正義とは何か」、そして「家族の愛とは何か」を鋭く問いかけるテーマが存在します。

正義と幸せの天秤

この作品が提示する1つ目のテーマは、「正義と幸せの天秤」です。

作中には「正しさのために生きているわけじゃない、幸せになるために生きている」という趣旨のセリフが登場します。

刑事として事件の真相を明らかにするという「正義」と、愛する家族が平穏に暮らすという「幸せ」は、時として両立しません。

主人公・柴崎が下した決断は、法の下の正義とは異なるかもしれません。しかしそれも彼なりの家族愛の形であり、視聴者に深い問いを投げかけます。

「思い込み」の危険性

もう1つの重要なテーマは、「思い込み(バイアス)の危険性」です。

「若い女性がひとり暮らしの部屋で殺された」と聞けば、多くの人は怨恨やストーカーによる「殺人事件」だと信じて疑わないでしょう。

物語の登場人物たち、それは刑事でさえも、この強力な思い込みに囚われ、真相から遠ざかってしまいました。この点は、物事の本質を見ることの難しさを示唆しています。

タイトルに込められた意味

そして、これらのテーマを象徴するのが『両刃の斧』というタイトルです。

この記事の筆者ヨミト
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作中では両刃の斧(ラブリュス)が、迷宮(ラビリンス)の語源であるという説があります。

これは一方の刃で真実という名の迷宮を切り拓こうとすれば、もう一方の刃が、自分自身や愛する家族を深く傷つけてしまう危険性を意味しています。

まさしく、真相を追い求めた登場人物たちの姿そのものを表した、秀逸なタイトルといえるでしょう。

【レビュー・評価】なぜ感動?なぜ「ひどい」?感想まとめ

「評価」という文字を虫眼鏡で見ている

ドラマ『両刃の斧』は、多くの視聴者から「間違いなく最高傑作」「涙が止まらなかった」と絶賛されています。

その一方で、「結末に納得できない」という厳しい声も上がる、まさに賛否両論を巻き起こした作品です。

ここでは様々な感想を基に、「感動した」と感じる理由と、一部で「ひどい」と言われる理由の両面から、この作品の魅力と課題を深く掘り下げていきます。

「感動した」「面白い」と評価される理由

本作が「感動した」「面白い」と高く評価される最大の理由は、俳優陣が見せる魂の演技にあります。

娘を失った元刑事・柴崎を演じた柴田恭兵さんには、「彼の俳優人生における最高傑作」という賛辞が、特に数多く寄せられています。

犯罪被害者の会で初めて胸の内を吐露する場面や、妻の最期を看取るシーンで見せた迫真の演技は、多くの視聴者の涙を誘いました。

また恩人と正義の間で葛藤する、後輩刑事・川澄を演じた井浦新さんの繊細な表現力も、物語に深い奥行きを与えています。

この記事の筆者ヨミト
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さらに予測不能なストーリー展開も、魅力のひとつです。

多くの視聴者が「犯人はこの人だろう」と推理しながらも、その予想は次々と裏切られます。

単なる犯人探しに終わらず、物語の核心には「家族の愛」という普遍的なテーマが据えられています。この重厚な人間ドラマとしての一面が、深い感動を呼んでいるのです。

「ひどい」「後味が悪い」と評価される理由

一方で物語の結末に対して、「ひどい」「現実味がない」といった否定的な感想が生まれるのも事実です。

理由は事件の真相が「姉妹間で起きた不慮の事故」という、あまりにも悲劇的で偶然性の高い出来事だった点にあります。

「そんなことがあり得るのか」という疑問が、一部の視聴者を物語から少し冷めさせてしまったようです。

また登場人物の誰もが完全には救われず、物語全体を重く切ない空気が覆っています。そのため観終えた後に、「後味が悪い」「救いがなくてひどい」と感じる人も少なくありません。

しかしこれは作品の欠点というより、「感動」とは異なる「あまりに悲しい物語」として、かえって強く心に残ったという声にも繋がっています。

賛否を超えて絶賛された俳優の怪演

ちなみに、このような賛否両論の中でも、ストーカー・森下役を演じた黒田大輔さんの演技については、ほぼすべての視聴者が「不気味で気持ち悪くて見事だった」と口を揃えます。

物語の理不尽さや恐怖を一身に体現した彼の怪演が、作品の質を一段と高めていることは間違いないでしょう。

『両刃の斧』に関するQ&A(よくある質問)

「Q&A」と印字された木のブロック

最後に、ドラマ『両刃の斧』に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1 結論、犯人は誰ですか?

15年前に長女・曜子の命を奪った直接の原因を作ったのは、実の妹である次女の和可菜です。ただしこれは殺意のある「殺人事件」ではなく、複数の不運が重なって起きた「悲劇的な事故」でした。

その事故の真相を知った父・柴崎が、家族を守るために森下殺害の罪をかぶろうとします。

Q2 森下や山田は犯人ではないのですか?

はい、森下も山田も、曜子殺害事件の犯人ではありません。森下は曜子のストーカーではありましたが、直接手を下してはいません。

山田も母親を森下に殺された過去から強い復讐心を抱いていましたが、それを実行には移しませんでした。

物語の中で彼らが犯人であるかのように描かれるのは、視聴者を惹きつけるための巧みな演出です。

Q3 なぜ「両刃の斧」というタイトルなのですか?

このタイトルは、「真実を追求する正義の刃が、同時に自分や愛する人を傷つける諸刃の剣にもなる」という、作品全体のテーマを象徴しています。

作中でも正義の斧が迷宮を切り拓く一方で、大切なものを傷つける危険性について語られる場面があり、物語の結末を暗示しています。

Q4 気まずいシーンがあるのですか?

視聴者や私の感想によると、過激な恋愛描写や性的なシーンはなく、家族で見て気まずくなるような場面はほとんどないとされています。

ただし殺人事件を扱っているため、遺体の発見シーンや一部暴力的な描写は含まれます。

物語は非常に重くシリアスですが、気まずさを感じるタイプのシーンは少ないといえるでしょう。

Q5 森下を殺害した犯人はだれですか?

森下を殺害したのは柴崎佐千夫です。ただし、これも計画的な殺人ではありませんでした。

森下は曜子の事件の真相をネタに柴崎を脅迫しようとしますが、逆上してナイフで襲いかかってきます。そのナイフを奪おうともみ合いになった結果、偶発的に森下自身に刺さってしまいました。

法律的には正当防衛と判断される状況でしたが、柴崎は別の理由からその事実を隠し、自ら罪をかぶろうとしたのです。

Q6 森下役を演じたのはどんな俳優さんですか?

作中で強烈な印象を残すストーカー・森下役を演じたのは、俳優の黒田大輔さんです。その不気味でリアルな怪演は「気持ち悪くてすごい」と多くの視聴者から絶賛されました。

黒田さんは是枝裕和監督作品の常連でもある実力派で、映画『恋人たち』で高崎映画祭の最優秀助演男優賞を受賞した経歴も持っています。

Q7 原作小説との違いはありますか?

ドラマは原作の筋書きに概ね忠実ですが、もっとも重要な違いは主人公・柴崎の人物像です。

この記事の筆者ヨミト
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原作で柴崎は「がっしりとした大柄な男」と描写されていますが、ドラマでは柴田恭兵さんが演じました。

柴田さんのキャスティングにより、ドラマ版は物理的な力による復讐者というイメージを排しました。

これにより、ごく普通の人間が内面に抱える悲しみと怒りの深さに焦点を当てた、より心理的なドラマへと舵を切ることに成功しています。

ドラマを観て興味を持った方は、原作を読むことで、登場人物のより詳細な内面描写に触れることができるでしょう。

『両刃の斧』のあらすじと注目ポイント総括

黒板に「まとめ」の文字

『両刃の斧』が私たちに突きつけるのは、真実を知ることの重みと、愛する者を守るための究極の選択という、根源的な問いです。

賛否両論を巻き起こしたこの慟哭の物語を、ぜひドラマや原作小説でご自身の目で確かめてみてください。

それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。

  • 大門剛明の同名ミステリー小説が原作で、2022年にWOWOWでドラマ化された
  • 主演は元刑事役の柴田恭兵と、その後輩刑事役の井浦新のW主演である
  • 物語は15年前に起きた娘の未解決殺人事件の再捜査を軸に展開する
  • 単なる犯人探しではなく、家族愛や正義のあり方を問う重厚な人間ドラマ
  • 主演・柴田恭兵の静かな怒りを秘めた父親役の演技は「最高傑作」と高く評価される
  • 長女の死の真相は、次女・和可菜の善意が生んだ悲劇的な不慮の事故であった
  • 父・柴崎は家族を守るため、事故の真相と自身の正当防衛を隠蔽しようとする
  • ストーカーの森下と婚約者の山田が、巧みなミスリード役として物語を撹乱する
  • タイトルは「真実を追う正義の刃が、大切な人を傷つける」ことの象徴
  • 「殺人事件に違いない」という思い込みが真相から目を曇らせる危険性も描く
  • 結末の偶然性や救いのない展開から、視聴者の間では賛否両論を呼んでいる
  • 犯人役・黒田大輔の視聴者に強烈な印象を残す不気味な怪演も見どころ
  • ドラマはPrime VideoやU-NEXTなど多くの動画配信サービスで視聴可能

最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が作品をより深く楽しむ一助となれば幸いです。執筆者「ヨミト」のプロフィールはこちらです。

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