『重力ピエロ』のあらすじを網羅|登場人物から映画との違いまで詳しく解説

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『重力ピエロ』のあらすじを網羅|登場人物から映画との違いまで詳しく解説

この記事でわかること

物語の基本的なあらすじと、作品の背景情報

登場人物の関係性と、物語の核心である家族の秘密

事件の真相や犯人、そして衝撃的な結末までの詳細

原作小説と映画版のストーリーや設定の主な違い

伊坂幸太郎さんの名作『重力ピエロ』のあらすじを知りたいけれど、ただのあらすじだけでは物足りないと感じていませんか?

この物語の本当の魅力は、巧みに張り巡らされた伏線と、涙なくしては語れない「家族の絆」に隠されています。

本記事では、ネタバレなしの基本的なあらすじはもちろん、物語の核心に迫るネタバレありの結末まで詳しく解説。

この記事の筆者ヨミト
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さらに登場人物たちの複雑な関係性や、原作と映画の違いまで、あなたが知りたい情報をすべて網羅しました。

なぜ春は放火したのか、タイトルの意味とは何か―。

最後まで読めば、この物語がただのミステリーではない理由がきっとわかるはずです。

『重力ピエロ』のあらすじを登場人物と共に紹介

『重力ピエロ』イメージ画像
イメージ|あらすじノオト

まずは次の構成順にそって、物語の基本的な情報や登場人物、ネタバレなしのあらすじを紹介します。

作品をまだ見ていない方も、安心して読み進めてください。

  • 小説『重力ピエロ』基本情報
  • 物語の鍵を握る登場人物と相関図
  • 大まかなあらすじ【ネタバレなし】
  • 『重力ピエロ』の魅力と深掘り考察
  • 読者・視聴者の感想まとめ|映画版はひどい?

小説『重力ピエロ』基本情報

『重力ピエロ』は、人気作家・伊坂幸太郎さんによる長編小説です。

本作は連続放火事件の謎を追うミステリーの要素と、複雑な過去を抱えた家族の絆を描くヒューマンドラマが巧みに融合しています。そのため、多くの読者から高い評価を得ています。

この記事の筆者ヨミト
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人気の理由は、単なる謎解きに留まらない物語の深さにあるでしょう。

軽快な会話劇のなかに遺伝や罪、家族の在り方といった重いテーマが織り込まれており、読後に深い余韻を残す点が特徴です。

物語の完成度の高さから複数の文学賞にノミネートされたほか、2009年には映画化もされました。これにより、幅広い層に知られる作品となったのです。

作品データ

具体的な作品情報は以下のとおりです。

項目内容
著者伊坂幸太郎
出版社新潮社
刊行年2003年(単行本)、2006年(新潮文庫)
ページ数485ページ(文庫版)
主な受賞・ノミネート歴第129回直木賞候補、第1回本屋大賞ノミネート、2004年版「このミステリーがすごい!」第3位
映画版公開2009年5月23日(監督:森淳一、主演:加瀬亮、岡田将生)

このようにミステリー小説としてだけでなく、心に響く人間ドラマとしても楽しめる点が、本作が長年にわたり愛され続ける理由だといえます。

物語の鍵を握る登場人物と相関図

たくさんの人物のフィギアの画像(登場人物のイメージ)

『重力ピエロ』の物語を深く理解する上で、個性豊かな登場人物たちの関係性を知ることが不可欠です。

それぞれのキャラクターが持つ背景や想いが複雑に絡み合い、物語に奥行きを与えています。

なぜなら、『重力ピエロ』は登場人物たちの行動や会話を通じて、多くの伏線が張られているからです。

一見何気ないやり取りが、後の展開に大きく関わってきます。そのため、各キャラクターの立ち位置を把握することで、より一層物語を楽しめるようになります。

物語の中心となる主な登場人物は、以下のとおりです。

■奥野 泉水(おくの いずみ)
主人公であり物語の語り手です。遺伝子を扱う会社に勤める真面目な青年で、弟の春と共に連続放火事件の謎を追います。

■奥野 春(おくの はる)
泉水の2歳下の弟。優れた容姿と芸術的才能を持ちますが、自身の出生にまつわる暗い過去を抱えています。落書き消しを仕事としています。

■奥野 正志(おくの ただし)
泉水と春の父親。癌を患い入院中ですが、非常に思慮深く、家族の精神的な支柱です。春とは血が繋がっていませんが、深い愛情を注いでいます。

■奥野 梨江子(おくの りえこ)
泉水と春の母親で、故人。元モデルの美しい女性で、物語の核となる過去の出来事の中心人物です。

■葛城(かつらぎ)
売春斡旋などで生計を立てる素性の怪しい男。春の出生に深く関わる、物語の重要な鍵を握る人物になります。

■郷田 順子(ごうだ じゅんこ)
春の前に現れる謎の美女。その正体は、かつて春のストーカーだった「夏子」です。

■黒澤(くろさわ)
泉水が調査を依頼する腕利きの探偵。伊坂幸太郎さんの他作品にも登場するキャラクターとして知られています。

登場人物たちの関係性(簡易相関図)

これらの登場人物の関係性をまとめると、以下のようになります。

泉水と春は、母・梨江子を同じくするものの、父親が異なる兄弟です。春の生物学上の父親は葛城であり、この事実が物語全体の根幹を成しています。

育ての親である正志は、血の繋がりを超えて春を愛し、「最強の家族」として兄弟を支えます。

そして事件の謎を追う過程で、泉水は探偵の黒澤を、春はストーカーの郷田順子を巻き込みながら、葛城という存在に迫っていくのです。

大まかなあらすじ【ネタバレなし】

単語帳に「あらすじ」の文字が印字

『重力ピエロ』は、仲の良い兄弟が自分たちの住む街で起こる連続放火事件の謎に挑むミステリーです。

しかしただの犯人探しではありません。事件を追う中で家族が抱える過去の秘密や、深い絆が明らかになっていくヒューマンドラマでもあるのです。

この記事の筆者ヨミト
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物語の語り手は、遺伝子について研究している兄の泉水です。

ある日、弟の春から「兄貴の会社が放火されるかもしれない」という不思議な予言を受けます。その言葉どおりにボヤ騒ぎが起きたことから、泉水は事件に興味を持つようになります。

謎のグラフィティアート

春によれば、放火現場の近くには必ず奇妙なグラフィティアート、つまりスプレーによる落書きが残されているという法則がありました。

兄弟は癌で入院している父親にも知恵を借りながら、この放火と落書きに隠されたメッセージの解読に乗り出します。

このように、ミステリーの謎解きを軸に物語は進みますが、次第に兄弟の複雑な生い立ちが深く関わってきます。そして家族が乗り越えてきた、「ある辛い出来事」に向き合うことになるのです。

この記事の筆者ヨミト
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事件の真相が、彼らの過去とどのようにつながっていくのかが、この物語の大きな見どころといえるでしょう。

『重力ピエロ』の魅力と深掘り考察

神秘的なイメージの本

『重力ピエロ』が多くの読者を惹きつける魅力は、重いテーマを扱いながらも、希望を感じさせる伊坂幸太郎さんならではの作風にあります。

ミステリーとしての面白さはもちろん、心に深く残る人間ドラマとしての一面が大きな特徴です。その理由として、主に3つのポイントが挙げられます。

軽快な会話劇と心に響く名言

1つ目は、登場人物たちが交わす軽快な会話劇です。

泉水と春、そして父親とのウィットに富んだやり取りは、物語に明るさと心地よいテンポを生み出しています。

作中にある「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」という言葉があります。これが作品全体の雰囲気を象徴しているといえるでしょう。

血の繋がりを超えた「家族の絆」

2つ目は、血の繋がりを超えた「家族の絆」が丁寧に描かれている点です。

多くを語らずとも深い愛情で息子たちを包み込む父親の姿は、特に多くの読者の心を打ちました。

「俺たちは最強の家族だ」というセリフは、この物語の核となるテーマを端的に表しています。

巧みに張り巡らされた伏線

そして3つ目は、巧みに張り巡らされた伏線の数々です。

遺伝子の話から絵画、歴史上のエピソードまで、一見無関係に見える事柄が、物語の謎と見事に結びついていきます。

知的な発見を楽しみながら読み進められる点も、本作の大きな魅力といえるでしょう。

タイトルに込められた意味

また、タイトルである『重力ピエロ』の意味を考察することも、この作品を深く味わう上で欠かせません。

作中には、サーカスのピエロが重力を感じさせずに軽々と空中ブランコを飛ぶ場面が出てきます。

これは人生の重い宿命(重力)を背負いながらも、明るく振る舞い、乗り越えようとする登場人物たちの生き様(ピエロ)を象徴していると解釈できます。

このように多彩な魅力が詰まっているからこそ、『重力ピエロ』はただのミステリー小説に終わらない、忘れがたい感動を読者に与えるのです。

読者・視聴者の感想まとめ|映画版はひどい?

「評価」という文字を虫眼鏡で見ている

『重力ピエロ』は、小説・映画ともに多くの人々の心に残り、世代を超えて語り継がれる作品です。

ただ物語が扱うテーマの重さや、原作小説が持つ絶大な人気から、評価が大きく分かれるのも事実です。

特に映画版には、「ひどい」という厳しい感想が見られることもあります。

なぜ評価がこれほど分かれるのでしょうか。

最大の理由は、原作小説が多くの読者にとって「特別な一冊」となっている点にあるでしょう。

そのため映画化に際して非常に高いハードルが設けられます。結果、「原作の繊細な心理描写が表現しきれていない」といった、原作ファンならではの厳しい意見が出やすくなるのです。

具体的に、どのような感想があるのか見ていきましょう。

肯定的な意見

小説・映画を問わずもっとも多く寄せられるのは「家族の絆に涙した」という声です。

血の繋がりを超えて深く結びつく兄弟の姿や、「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」といった父親の愛情深い言葉に、心を揺さぶられたという感想が多数あります。

また「重いテーマなのに会話が軽快でおしゃれ」、「伏線回収が見事」という、伊坂幸太郎さんならではの作風への称賛も目立ちます。

映画版では特に、父親役を演じた小日向文世さんの「優しい笑顔が役にぴったりだった」という評価が、作品の温かい雰囲気を支えています。

否定的な意見

その一方で、否定的な意見も見過ごせません。

特に映画版に対しては、「原作にあった探偵の黒澤が登場しない」「母親の死因など設定が変更されていて違和感があった」といった、原作ファンからの具体的な不満が挙げられます。

また「ミステリーと家族ドラマのどちらを主軸にしたいのかわかりにくく、中途半端に感じた」という厳しい声もあります。

小説・映画ともに、「レイプという題材が生理的に受け付けなかった」「結末が予想できてしまい、ミステリーとしての驚きは少なかった」など、テーマや展開そのものが合わないと感じる人もいるようです。

このように様々な感想がありますが、それは本作が多くの人の心に何かしらの強い感情を深く刻み込む、力を持った作品であることの証明といえるでしょう。

『重力ピエロ』のあらすじをネタバレ解説!結末や考察も

『重力ピエロ』イメージ画像2
イメージ|あらすじノオト

ここからは物語の核心に触れる情報を解説します。内容は次のとおりです。未読・未視聴の方はご注意ください。

  • 物語の核心と結末までの詳細なあらすじ【ネタバレ】
  • 事件の犯人と放火の理由
  • 母・梨江子の本当の死因は?
  • ラストシーン|春は死んだ?衝撃の結末を解説
  • 小説と映画の違いは?
  • 『重力ピエロ』に関するQ&A(よくある質問)

物語の核心と結末までの詳細なあらすじ【ネタバレ】

この先は物語の結末に触れる重大なネタバレを含みます。未読・未視聴の方は十分にご注意ください。

家族が抱える「辛い過去」

物語の根底には、主人公・泉水の家族が抱える「辛い過去」が存在します。それは弟の春が、母・梨江子をレイプした犯人との間に生まれた子どもである、という事実でした。

物語は、仙台で起こる連続放-火と謎のグラフィティアートの事件を軸に進みます。

兄の泉水は、弟の春に巻き込まれる形で事件の謎を追ううちに、ひとりの男「葛城」に行き着きます。

この記事の筆者ヨミト
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葛城は春の生物学上の父親であり、過去に母を襲ったレイプ犯その人でした。

物語が大きく動くのは、ここからです。

事件の真相

実は、一連の放火とグラフィティアートは、すべて弟の春による自作自演だったのです。

放火は、罪の意識もなくのうのうと生きる葛城への警告として行われました。かつてのレイプ事件の現場をなぞる形で行われていたのです。

そしてグラフィティアートに隠された遺伝子の暗号は、兄である泉水をこの復讐計画に引き込むための、春が仕掛けた目印でした。

春にとって、兄の存在は計画をやり遂げるための「お守り」のようなものだったのです。

物語の結末

計画の最終段階で、春はついに葛城と直接対峙します。

しかし葛城に反省の色は一切なく、それどころか自らの行いを正当化しようとします。その姿に絶望した春は、「赤の他人が父親面するんじゃねえよ」という言葉と共に、バットで葛城を殺害します。

驚くべきことに、兄の泉水もまた、春とは別に葛城の殺害を計画していました。兄弟は同じ憎しみを共有していたのです。

血の繋がりを超えた絆

事件後、春は自首を決意しますが、泉水は「おまえは許されないことをやった。ただ、俺たちは許すんだよ」と、弟を強く引き止めます。

入院中の父親も、ふたりの様子からすべてを察しますが、彼らを追及しませんでした。

そして春に向かって「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」と静かに告げ、血の繋がりを超えた本物の親子としての絆を示すのです。

やがて父は亡くなり、すべての重荷を下ろした兄弟。

この記事の筆者ヨミト
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物語は、冒頭の「春が二階から落ちてきた」という印象的な一文で幕を閉じます。

これは春が過去の「重力」から解放され、新たな人生を歩み始めたことを象徴する、希望に満ちたラストシーンでした。

事件の犯人と放火の理由を深掘り

『重力ピエロ』イメージ画像3
イメージ|あらすじノオト

前述のとおり、物語で起こる連続放火と、現場に残されたグラフィティアート(落書き)の犯人は、弟の春です。

これらはすべてて、春が長年にわたって練り上げ、たったひとりで実行した周到な計画でした。

この計画には、2つの異なる目的が隠されています。

葛城への復讐と警告

1つ目の目的は、自身の出生の原因となった男、つまり母をレイプした葛城への復讐です。

春は、かつて葛城が連続レイプ事件を起こした現場を正確に特定し、その場所を順番に放火していきました。

これは罪の意識など微塵もなく暮らす、葛城本人にしかわからない、無言の警告でした。

この記事の筆者ヨミト
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「お前の罪を俺は決して忘れていない」という強いメッセージを、炎によって送り続けていたのです。

泉水を巻き込むための謎解き

そして2つ目の目的は、兄である泉水を計画の共犯者にすることです。ただし兄を本当の犯罪に巻き込むわけではありません。

現場のグラフィティアートに、遺伝子を扱う仕事をしている泉水が興味を持つような遺伝子の暗号(A,T,C,G)を隠しました。

そうすることで、これは難解な「謎解きゲーム」であるかのように見せかけ、知らず知らずのうちに兄を計画に引き込んだのです。

春にとって兄は、この辛く孤独な復讐をやり遂げるための、心の支えとなる「お守り」のような存在でした。

このように、放火は「葛城への復讐と警告」、グラフィティアートは「泉水を巻き込むための謎解き」という、二重の目的を持って行われていたのです。

母・梨江子の本当の死因は?

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イメージ|あらすじノオト

泉水と春の母親である梨江子の死因は、原作小説と映画で設定が異なっています。

どちらの媒体も彼女が抱えていた心の苦しみに焦点を当てた、示唆に富んだ描写となっているのが特徴です。

原作小説での描写

まず原作の小説では、梨江子は「病気」で亡くなったと語られます。

しかし作中では、父親が患っている癌とは違い、「癌ではない」とわざわざ付け加えられるだけで、具体的な病名は一切明かされません。

定期的に入退院を繰り返していたという事実や、過去の痛ましい事件が彼女に残した消えない傷を考えると、多くの読者は「精神的な心労が原因の病だったのではないか」と推測することになります。

このようにあえて曖昧にすることで、彼女の苦しみの深さを読者に想像させる作りになっています。

映画版での描写

一方、映画版では死因が「自動車事故」とはっきりと描かれています。ただ、これも単なる不慮の事故として片付けられているわけではありません。

映画では、梨江子が心の負担に耐えかねていた様子が描かれています。

そのため事故が本当に偶然だったのか、それとも精神的に追い詰められた彼女が自ら死を選んだのかは、観る側に解釈が委ねられるようになっています。

死因は違えど共通する「心の傷」

いずれにしても、梨江子が亡くなるまで深い心の傷を抱え続けていたことは、物語全体に大きな影響を与えています。

この死因の描き方の違いは、原作と映画の重要な相違点のひとつといえるでしょう。

ラストシーン|春は死んだ?衝撃の結末を解説

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イメージ|あらすじノオト

物語のラストシーンで、弟の春が二階から飛び降りますが、春は死んでいません。この印象的な行動は、決して自殺のような悲劇的なものではありません。

春が過去のすべての苦しみから自らを解き放ち、新たな一歩を踏み出すことを力強く象徴した、希望に満ちた場面なのです。

「落下」に込められた意味

本物語は、「春が二階から落ちてきた」という、読者の心に深く刻まれる一文で幕を開けます。

そしてすべての事件が終わり、兄弟が未来へ向かおうとする最後の場面も、まったく同じ「春が二階から落ちてきた」という言葉で締めくくられます。

この見事な構成こそが、春の「再生」を何よりも雄弁に物語っています。

つまり、物語の冒頭で描かれる過去の「落下」は、春の意思とは無関係に始まった、彼の過酷な人生の始まりを象徴していました。しかしラストシーンの「落下」は、まったく意味が異なります。

これは憎むべき出生の秘密や、犯した罪の意識といった、彼を縛り付けていた人生のあらゆる「重力」から、自らの意思で自由になるための飛躍なのです。

兄の泉水が、その様子をどこか晴れやかに見守っていることからも、この結末が悲劇ではなく、兄弟にとっての本当の意味での新たなスタートであることがわかります。

小説と映画の違いは?

原作小説と映画版では、物語の根幹は同じですが、観る人の印象を大きく左右する重要な設定変更がいくつかあります。

どちらを先に体験するかで、物語の受け取り方が変わるかもしれません。主な違いは以下のとおりです。

母親の死因とそれが示すもの

前述のとおり、母親・梨江子の死因は大きく異なります。

原作では「癌ではない病死」と曖曖に描かれ、彼女が長年抱えてきた精神的な苦しみを想像させます。

一方、映画では「自動車事故」という、より突然で衝撃的な出来事として描かれています。

この変更により、家族が抱える悲しみの質感が、内面的な苦悩から、より直接的な悲劇へと変わって見えます。

兄・泉水の人物像と行動の動機

兄である泉水の人物像も、設定の変更によって印象が異なります。

原作では「遺伝子関連企業の会社員」であり、社会人としての冷静な視点を持っています。

そのため葛城への復讐計画も、怒りを内に秘めつつも緻密に準備を進める、計算された行動として描かれます。

一方の映画では「大学院生」に変更されており、より若く青い印象を与えます。

結果、彼の復讐への動きは、感情が抑えきれずに爆発したような、衝動的な行動として映し出されています。

人気キャラクター「黒澤」の不在

映画版におけるもっとも大きな変更点のひとつが、原作の重要人物である探偵の黒澤が登場しないことです。

この記事の筆者ヨミト
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原作ファンにとって黒澤は、物語に独特のユーモアと緊張感をもたらす人気のキャラクターです。

黒澤が担っていた調査の役割が映画では別の形で処理されるため、物語の展開や雰囲気が原作とは少し異なっています。

これらの違いから、映画版はよりスピーディーで登場人物の感情がストレートに伝わるドラマとして楽しめます。

一方、原作小説はより文学的で、登場人物の内面をじっくりと読み解くミステリーとして味わうことができるでしょう。

『重力ピエロ』に関するQ&A(よくある質問)

「Q&A」と印字された木のブロック

ここでは、『重力ピエロ』を読んだり観たりした方が抱きやすい疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。

Q1. 結局、事件の犯人は誰ですか?

物語で描かれる連続放火事件と、現場に残されたグラフィティアート(落書き)の犯人は、すべて弟の春です。

これは自身の出生の原因となった男・葛城への復讐と、兄・泉水を計画に引き込むために、春がひとりで仕組んだものでした。

Q2. 物語のラストで、春は死んでしまうのですか?

いいえ、春は死んでいません。

ラストシーンで二階から飛び降りる行為は、春が過去の苦しみや罪の意識といった全ての重荷から解放されます。そして新しい自分として「再生」したことを象徴する、希望に満ちた場面です。

Q3. お母さんの死因は何だったのですか?

母親・梨江子の死因は、原作小説と映画版で異なります。

小説では「癌ではない病気」と曖昧にされており、具体的な病名は明かされません。一方、映画では「自動車事故」で亡くなったとされています。

この記事の筆者ヨミト
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小説と映画ともに、母親・梨江子が心に深い傷を抱えていたことが示唆されています。

Q4. 映画の評判が「ひどい」と聞きましたが本当ですか?

映画版には「原作の良さが活かされていない」「物語が軽くなっている」といった厳しい意見や、「テーマが重すぎてつらい」といった感想があるのは事実です。

ただ多くの方が、「家族の絆に感動した」「俳優の演技が素晴らしい」と高く評価しており、一概に「ひどい」とはいえないでしょう。

原作ファンからの期待値の高さゆえに、評価が大きく分かれる作品といえます。

Q5. なぜタイトルが『重力ピエロ』なのですか?

このタイトルは、作中の「楽しそうに生きてれば、地球の重力なんてなくなる」という言葉に由来します。

重い宿命(=重力)を背負っていても、まるで重力を感じさせないピエロのように、陽気に振る舞い、困難を乗り越えようとする登場人物たちの生き様を象徴しています。

『重力ピエロ』のあらすじと物語の要点まとめ

黒板に「まとめ」の文字

『重力ピエロ』は、連続放火事件というミステリーの裏で、血の繋がりを超えた「最強の家族」が重い宿命(=重力)に立ち向かう、感動的な物語です。

軽快な会話と心に残る言葉の数々が、あなたに家族の本当の意味を問いかけるでしょう。

それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。

  • 人気作家・伊坂幸太郎によるミステリーと家族の絆を融合させた長編小説である
  • 物語の舞台は宮城県仙台市で、連続放火と謎のグラフィティアートの事件が発生する
  • 主人公は遺伝子を扱う会社員の兄「泉水」と、その弟で芸術的な才能を持つ「春」である
  • 春は、母が過去にレイプされた際に生まれた子であり、兄弟に血の繋がりは半分しかない
  • 兄弟は癌で入院中の父と共に、放火と落書きの謎解きに乗り出す
  • 物語の核心は、弟の春が抱える出生の秘密と、それに伴う葛藤である
  • 連続放火とグラフィティアートの犯人は、弟の「春」による自作自演であった
  • 放火の目的は、母を襲った実の父親「葛城」への復讐と警告である
  • グラフィティアートは、兄の泉水を計画に引き込むための暗号という役割を持つ
  • 春は最終的に、反省の色を見せない葛城をバットで殺害する
  • 物語のラストで春は二階から飛び降りるが、これは死ではなく過去からの解放と再生を象徴する
  • 母親の死因は原作では「病死」、映画では「自動車事故」と設定が異なっている
  • 映画版では、原作の人気キャラクターである探偵「黒澤」は登場しない
  • 「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」という台詞が作品のテーマを貫いている
  • タイトルの『重力ピエロ』は、重い宿命を背負いながらも軽やかに生きようとする家族の姿を象徴する

最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事は、書評ブロガーのヨミトが執筆しました。(プロフィールはこちら

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