
この記事でわかること
✓ 作品全体のテーマと6つの短編からなる構成
✓ 各短編のネタバレなしの導入と物語の雰囲気
✓ 各短編の核心に触れる詳細な物語の展開と結末
✓ 特に注目される短編「違う羽の鳥」の詳しい物語の内容
あの未曾有のパンデミックは、私たちの日常にどんな爪痕を残したのか?
一穂ミチが描く、コロナ禍のリアルと人間の深淵。第171回直木賞受賞作『ツミデミック』は、平凡な日常が「罪」と隣り合わせになる瞬間を鮮烈に切り取った6つの物語。
一穂ミチが描く、コロナ禍のリアルと人間の深淵。第171回直木賞受賞作『ツミデミック』は、平凡な日常が「罪」と隣り合わせになる瞬間を鮮烈に切り取った6つの物語。

読み終えた後、あなたはきっと誰かとこの物語について語り合いたくなるでしょう。
「ツミデミック」のあらすじと作品情報
一穂ミチさん最新作
— 光文社 文芸編集部 (@bungeitosyo) January 22, 2024
📕『ツミデミック』📕
パンデミック×"罪"を描いた鮮烈な作品集
早くも3刷重版🎉
あの禍を経験した私たち、誰もが身に覚えのあるような人生の断片が描かれる傑作です❗️ pic.twitter.com/tuu8cib1eb
この章ではまず、「ツミデミック」がどのような作品なのか、その骨子となる基本的な情報や各物語のあらすじを詳しくご紹介します。
次の項目に沿って解説していきますので、ぜひ読み進めてみてください。
- 作品の基本情報と作者「一穂ミチ」について
- 目次と各章簡単なあらすじ
- 登場人物を大まかに紹介
- 全6編のネタバレありのあらすじ
- 注目話「違う羽の鳥」の詳細
作品の基本情報と作者「一穂ミチ」について
「ツミデミック」は、多くの読者を魅了し続ける作家、一穂ミチさんによる注目すべき作品です。

一穂さんはBL作品でデビューした後、その繊細な筆致で一般文芸の分野でも高く評価されています。
『スモールワールズ』などの著作で数々の文学賞候補に選ばれてきました。そして本作「ツミデミック」は、第171回直木三十五賞を受賞し、その文学的な価値を不動のものとしたのです。
出版社は光文社から刊行されています。
作品のテーマと構成
この物語はコロナ禍という特異な状況下で生きる人々の心理や、彼らが直面する「罪」をテーマにした6編からなる短編集です。
そのためジャンルとしては現代小説でありながら、深い心理描写が特徴の心理フィクションといえるでしょう。また各話に潜む事件性から、犯罪小説の側面も持ち合わせています。

各短編は独立した物語として展開されるため、どの話からでも読み進めることが可能です。
読書の時間があまり取れない方にも、手に取りやすい構成も魅力のひとつです。
一穂ミチさんならではの、日常に潜む人間の機微を鋭く、かつ丁寧に描き出す筆致が、この作品集の隅々まで行き渡っているのを感じ取れるはずです。
目次と各章の簡単なあらすじ

「ツミデミック」は、私たちが経験したコロナ禍という特別な時代を背景にしています。そこに生きる人々のさまざまな「罪」のかたちを浮き彫りにする、全6編から構成された短編集です。
物語の共通のテーマとして、パンデミック下で増幅される人々の心の揺らぎや、そこから生まれてしまう過ち、そして抱えきれない葛藤などが描かれます。
収録作品一覧(目次)
本書は以下の六つの物語で構成されており、それぞれが独立したお話となっています。
- 違う羽の鳥
- ロマンス☆
- 憐光
- 特別縁故者
- 祝福の歌
- さざなみドライブ
全体の雰囲気と読みどころ
全体的な内容としては、例えば大学を中退し夜の街で働く青年が奇妙な出会いを経験します。
また職を失った男性が、思いがけないことから隣人と関わりを持つなど、ごく普通の人々が予期せぬ出来事に直面し、人生の岐路に立たされる様子が描かれるのです。

先の見えない不安のなかで、彼らの選択がどのような結末を迎えるのか、読み進める手が止まらなくなるでしょう。
各話は独立しているため、興味を持ったタイトルから気軽に読み始めることができるのも、この短編集の魅力のひとつといえます。
ミステリアスな雰囲気をもつ話から心が温まるような話、あるいは少し背筋が寒くなるような話まで、多様な味わいの物語が詰まっています。このため飽きることなく楽しめるはずです。
登場人物を大まかに紹介

「ツミデミック」には、コロナ禍という困難な時代を懸命に生きる、私たちと変わらない様々な立場の人々が登場します。
この作品は短編集であるため、各物語で異なる主人公たちがそれぞれの人生模様を織りなすことになります。
多様な背景を持つ主人公たち
具体的には、夜の街で日銭を稼ぐ若者や、子育てと家庭環境に悩む主婦が登場します。
過去の出来事と向き合うことになる人物や、予期せず職を失い将来への不安を抱える男性もいます。
さらに家族に関する大きな問題に直面する父親、そしてSNSを通じて集まった、それぞれに事情を抱える人々など、多岐にわたる境遇のキャラクターが描かれているのです。

重要なのは登場人物が決して特別な存在ではなく、どこにでもいるような普通の人々であるという点です。
パンデミック下の葛藤
ごく平凡な人々が、パンデミックという非日常的な状況に置かれる。
このことで普段は心の奥にしまい込んでいる感情や、人間関係の歪み、そしてときに法に触れてしまうような「罪」と向き合うことになります。
登場人物たちは、それぞれ内面に葛藤を抱えています。
そして彼らが下す一つひとつの決断を通じて、人間の脆さや図太さ、さらには複雑な心理が巧みに描き出されているのが、本作の大きな特徴といえるでしょう。
各キャラクターのより詳細な背景や物語における役割については、各短編を読み進める中で明らかになっていきます。そのため、ここでは深く触れません。
全6編のネタバレありのあらすじ

この項目では、「ツミデミック」に収録されている全6編の物語について、それぞれの核心部分に触れたあらすじを紹介いたします。

まだ作品を読まれていない方や、ご自身で結末を知りたいという方は、この先の閲覧にご注意ください。
「ツミデミック」の各短編は、コロナ禍という共通の時代認識のもとで展開します。登場人物たちが直面する「罪」や、時として過酷な運命を、読者の予想を裏切る展開と共に描いているのが特徴です。
「違う羽の鳥」
まず「違う羽の鳥」では前述のとおり、死んだはずの同級生を名乗る謎の女と主人公の出会いがあります。そして解き明かされないままの真相がミステリアスな余韻を残します。
「ロマンス☆」
「ロマンス☆」は、高圧的な夫と子育てでストレスを抱えた主婦が、フードデリバリーサービスのイケメン配達員に心を奪われる物語です。これにより彼女は徐々に破滅に向かっていきます。
「憐光」
「憐光」では、15年前に水害で命を落とした少女が幽霊となって現代に現れます。自身の死の真相が、信じていた親友と恩師による裏切りであったことを知るという、悲痛な展開が待っています。
「特別縁故者」
「特別縁故者」は、近所の裕福な老人の財産を狙っていた失業中の男性が主人公です。
彼が最終的にはその老人からの思いがけない温情に触れ、人間的な救いを得るという、ほのかな希望を感じさせる物語となっています。
「祝福の歌」
「祝福の歌」では、高校生の娘の予期せぬ妊娠と、隣家の住人の不審な様子が絡み合いながら展開します。
この物語は代理出産や、国際情勢といった現代的な問題も背景に含みつつ、家族の愛や絆、主人公自身の出生の秘密が明らかになる感動的な結末を迎えます。
「さざなみドライブ」
最後の「さざなみドライブ」は、SNSを通じて集団自殺を計画した男女5人が主人公です。しかしその計画の裏には、発起人の別の目的が隠されていました。
ある参加者の行動によって悲劇は未然に防がれ、そして彼らは再びそれぞれの人生を歩み出すことを選択します。
作品に通底するテーマ性
これらの物語に共通しているのは、パンデミックという特殊な状況が、人々の孤独感や経済的な困窮、精神的なストレスを増幅させる点です。
そしてときとして、彼らを過ちへと追い込んでしまう現実を克明に描いているのです。

しかし本作は、単に暗い話ばかりを集めたものではありません。
なかにはかすかな光が差し込むような結末や、人間の複雑な感情が深く掘り下げられた物語も含まれており、読後に様々な思いを巡らせることになるでしょう。
注目話「違う羽の鳥」の詳細(ネタバレ注意)

この欄は、「違う羽の鳥」の物語の核心に触れる内容となりますので、未読の方は十分にご注意ください。
「違う羽の鳥」は、過去の出来事と現在の不可解な出会いが絡み合い、読者に強い印象と謎を残す一編です。
謎めいた出会いと過去の秘密
物語は大学を中退し、夜の街で客引きのアルバイトをしている青年・優斗が主人公です。ある日、優斗は勤務中にひとりの女性から声をかけられます。

彼女は優斗の中学時代の同級生で、当時自殺したはずの「井上なぎさ」と同じ名前を名乗るのです。
優斗は戸惑いながらも彼女と行動を共にし、話を聞くうちに死んだはずのなぎさしか知り得ないような情報を、彼女が口にすることに気づきます。
彼女が語る内容には、なぎさが生前抱えていた母親との深刻な確執が含まれています。
加えて、もしかすると誰かを自分の身代わりにして死を偽装したのではないか、といった衝撃的な可能性も示唆されるのです。
さらに優斗自身も過去に、井上なぎさの写真を利用してSNSで別人として振る舞う「裏アカウント」を作成していたという秘密を抱えていました。この事実が物語に不穏な影を落とします。
解釈の余地を残す結末
最終的に、その女性の正体がはっきりと明かされることはありません。
彼女は本当に生きていた井上なぎさだったのか、それともまったくの別人だったのでしょうか。あるいは優斗が見た幻や幽霊のような存在だったのかもしれません。

解釈は読者に委ねられる形で物語は幕を閉じます。
この曖昧な結末が都市伝説のような不確かさや、人間の記憶の危うさ、そして消し去ることのできない罪の意識といったテーマを強く印象づけるでしょう。
「ツミデミック」のあらすじ|魅力と評価

各短編のあらすじを通して物語の輪郭が見えてきたところで、ここからは「ツミデミック」という作品をさらに理解するための情報をお届けします。
次の項目に沿って、作品の奥深さに迫っていきましょう。
- 考察「ツミデミック」のタイトルの意味とは?
- 本作の魅力と見どころを深掘り
- 読者の感想・評判まとめ
- 直木賞受賞 選評について
- 「ツミデミック」はこんな人にオススメ
考察「ツミデミック」のタイトルの意味とは?
「ツミデミック」という一度耳にすれば忘れがたい、独創的なタイトルには、この物語群の核心に迫る深い意味合いが込められていると考えられます。
作者の一穂ミチさん自身がインタビューで語っているように、この言葉は「パンデミック」と「罪(ツミ)」というふたつの単語を組み合わせた造語です。
このタイトルは作品がまさにコロナ禍という、世界的な感染症の流行(パンデミック)のさなかに展開することを示唆します。
人々が直面し、あるいは知らず知らずのうちに犯してしまう様々な「罪」の形を描き出すという、作品全体のテーマを的確に指し示しているものです。
一穂さんは、このタイトルについて「この本でなければつけられないものがいい」と考え、作品完成のギリギリで思いついたと語っています。それだけ作品の本質を凝縮した言葉だといえるでしょう。
「パンデミック」がもたらしたもの
ここで言う「パンデミック」とは、単に感染症が広がったという事実だけではありません。
パンデミックにより引き起こされた社会全体の閉塞感、人々の間に生まれた不安や孤立、経済的な困窮といった、息苦しい状況全般を指していると捉えられます。
そしてこのような特殊な環境が、皮肉にも様々な「ツミ」が生まれやすい土壌となってしまったのかもしれません。
「ツミ」の多層的な解釈
ではもう一方の「ツミ」とは何を意味するのでしょうか。これは、法律で裁かれるような明確な犯罪行為だけに限定されるものではないと考えられます。
作者自身も「法律とは別のところで生まれる罪、そしてその罪悪感」について触れているように、もっと広範囲で多層的な意味合いを含んでいるのです。
例えば、人が心の中に抱えてしまう後悔や罪悪感、日常の中でついてしまう些細な嘘。
道徳的に許されないと感じながらも行ってしまう行為や、社会的な規範から少しずつ逸脱してしまうことも含まれるでしょう。
さらには、どうにもならない状況に追い詰められ、まるで人生が行き詰まってしまうかのような「詰み」の状態までをも内包していると解釈できます。

実際に読者の中には、このタイトルから「罪が感染するように蔓延する状況」をイメージする声があります。
それだけでなく、「人生が詰む(つむ)ようなパンデミック」といった、八方塞がりの苦境を表現していると読み解く声も見受けられるのです。
タイトルが象徴するもの
このように多角的に考察すると、「ツミデミック」というタイトルは、コロナ禍という未曽有の事態がもたらした社会全体の重苦しい雰囲気を映し出します。
そのなかで露呈する人間の心の弱さや過ちがまず見て取れます。それらがまるで目に見えない感染症のように人から人へと伝播し、社会全体に広がっていく様子を、作者は鮮烈に表現しているのではないでしょうか。
この作品集に収められた六つの物語は、まさにそうした「ツミデミック」と呼ぶべき状況のなかでもがき、ときに過ちを犯しながらも生きようとする人々の姿そのものを描き出しているのです。
本作の魅力と見どころを深掘り

「ツミデミック」が多くの読者を惹きつけ、第171回直木賞という栄誉に輝いた背景には、いくつかの際立った魅力と見どころが存在します。
まず特筆すべきはコロナ禍という、私たち自身が経験した未曾有の出来事を舞台にしている点でしょう。
これにより、物語に描かれる人々の不安や戸惑い、社会の閉塞感といったものが非常にリアルに感じられます。
登場人物たちの感情に深く共感しながら、読み進めることができるはずです。
多様な物語と巧みな心理描写
また本作は6つの独立した物語からなる短編集でありながら、それぞれの話が異なる雰囲気とテーマを持っている点も大きな魅力といえるでしょう。
ある物語では背筋が凍るようなサスペンスが展開され、また別の物語では人間の心の温かさに触れて涙するなど、一冊で多様な読書体験ができます。このような構成は、読者を飽きさせない工夫と考えられます。

そして何よりも一穂ミチさんの巧みなストーリーテリングと、登場人物たちの心理描写の深さが見逃せません。
ごく平凡な日常を送っていたはずの人々が、パンデミックという異常事態の中でどのように心が揺れ動き、ときには過ちを犯してしまうのでしょうか。
その過程が非常に繊細かつ克明に描かれており、人間の弱さだけでなく、強さや複雑な感情の機微を鋭くえぐり出しています。
社会性と深いテーマ
さらに物語のなかには、持続化給付金を巡る問題やSNSの光と影、家庭内での緊張関係といった、コロナ禍で実際に顕在化した社会的なテーマも巧みに織り込まれています。
これらの要素が作品に一層の深みとリアリティを与えているのです。
読後には単に物語の面白さを味わうだけでなく、現代社会のあり方や人間の本質について、深く考えさせられるのではないでしょうか。
読者の感想・評判まとめ

「ツミデミック」は、多くの読者から注目を集め、その内容について様々な感想や評判が寄せられています。
全体として、コロナ禍という誰もが経験した状況を背景にした物語のリアリティや、一穂ミチさんの読者を引き込む筆力が高く評価されているようです。

多くの人が、短編集でありながら一つひとつの物語が心に深く残り、登場人物の感情に共感しています。
「思わず泣いてしまった」「深く考えさせられた」「あっという間に読み終えてしまった」といった声が、その感動の大きさを物語っているでしょう。
文章表現とテーマ性への評価
一穂ミチさんの文章表現に関しては、「情景が目に浮かぶよう」「心理描写が巧み」といった、称賛の声が特に目立ちます。
また作品のテーマである「コロナ禍における罪」について、読者それぞれが自身の体験や感情と照らし合わせながら、物語を自分事として捉えている様子がうかがえます。
作品の多面性と読書スタイル
収録されている6つの短編は、それぞれ異なる雰囲気をもっています。
イヤミス(読後に嫌な気分になるミステリー)のような緊張感のある話もあれば、心が温まるような救いのある話あります。このように、一冊で多様な感情を味わえる点も魅力として挙げられています。
ただその多様性ゆえに物語によっては、「前半は少し暗い気持ちになった」と感じる方や、読後感が話によって大きく異なるため、好みが分かれる場合もあるかもしれません。
オーディオブックで作品を楽しまれた方もおり、多様な読書スタイルでこの物語に触れることができる点も嬉しいポイントです。
直木賞受賞 選評について

「ツミデミック」は、文学界においても高く評価され、栄えある第171回直木三十五賞を受賞しました。
選考委員の方々からは作品のもつ文学性や、コロナ禍という現代社会の特異な状況を鋭く切り取った点について、多くの称賛の声が寄せられています。
選考委員からの称賛の声
選考の過程では、一穂ミチさんの確かな筆力と巧みな物語構成、登場人物たちの内面を深く掘り下げる洞察力などが評価の対象となりました。
例えば、角田光代氏は日常のなかに潜む出来事の連鎖が、巧みに描かれている点を指摘しています。そして多くの選考委員からの圧倒的な支持があったと述べました。

また浅田次郎氏は、現代社会の出来事を文学的に解釈することに成功した作品であると称えています。
三浦しをん氏は作者のコロナ禍に対する真摯な姿勢と、読者が登場人物の日常に没入できるほどの筆力に心打たれたと評しました。
少し否定的な評価も
一方で選考委員の中には、全6編の短編からなる構成の中で、特定の作品の雰囲気やテーマ性について、他の作品とのバランスを指摘する意見もありました。
林真理子氏は、「燐光」という作品が全体のトーンと少し異なると感じたようです。
また高村薫氏は、エンターテインメントとしての巧みな作り込みを評価しつつも、その人工的な手触りが読者を刺激するのだろうと分析しています。
「ツミデミック」の意義
宮部みゆき氏が「この作品が受賞したことで、直木賞の歴史に新型コロナウイルスを『記録』することができました」と述べたように、「ツミデミック」は、単なる物語としてだけではありません。

私たちが経験した困難な時代を映し出す鏡としても、その価値を認められたといえるでしょう。
これらの選評は作品をより深く、多角的に理解するための一助となるはずです。
「ツミデミック」はこんな人にオススメ

「ツミデミック」は、特定のテーマや作風に興味を持つ幅広い読者層に手に取っていただきたい作品です。特に以下のような方に強くオススメできます。
コロナ禍に関心がある方へ
まず私たちが経験したコロナ禍という時代に、人々がどのようなことを感じ、どのように生きていたのかに関心がある方には、非常に興味深い一冊となるでしょう。
物語を通じて、当時の社会の雰囲気や個人の葛藤がリアルに伝わってきます。そのためご自身の体験と重ね合わせながら、読むことができるはずです。
深い人間ドラマを求める方へ
また人間の心の奥深くや、複雑な感情の機微を描いた物語がお好きな方にも、きっと満足いただける内容です。
一穂ミチさんの持ち味である繊細な心理描写によって、登場人物たちが抱える悩みや、ときに犯してしまう過ち、そしてその背景にある切実な思いが丁寧に描き出されています。
単なる事件や出来事の描写に留まらず、なぜそうなったのかという人間の内面に深く迫る作品を求めている方にぴったりといえます。
質の高い短編集をお探しの方へ
さらに質の高い短編集を読みたいと考えている方にもおすすめです。
「ツミデミック」は6つの独立した物語で構成されており、それぞれが異なるテーマや雰囲気を持っています。そのため、一話ずつ自分のペースで読み進めることができるでしょう。
ミステリアスな緊張感のある話から心が温まるような話、少し考えさせられる後味の残る話まで、多彩な物語を楽しめます。
忙しい日々の中でも、質の高い読書体験を求める方に適しています。
加えて、直木賞受賞作ということもあり、文学的な評価の高い作品に触れたいという方や、現代社会が抱える問題意識を反映した物語を読みたいという方にも、手にとっていただきたい一冊です。
ただし作品によっては人間の暗い側面や、やるせない現実が描かれている部分もあります。
そういったテーマが苦手な方は、読者のレビューなどを参考に、読後感が比較的穏やかな短編から読み始めてみるのも良いかもしれません。
書籍情報(文庫本について)

「ツミデミック」を手に入れる方法として、現在は主にハードカバー版が流通しています。こちらの書籍は、光文社より2023年11月22日に発売されました。
ページ数は276ページで、定価は1,870円(税込)です。
ハードカバーのしっかりとした作りは、作品を大切に手元に置きたい読者にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
多様な読書スタイルに対応
また読書のスタイルに合わせて、他の形式も選ぶことができます。
具体的には電子書籍版や、朗読で物語を楽しめるAudible版も提供されているのです。
ご自身の読書環境や好みに応じて、最適な方法で「ツミデミック」の世界に触れることが可能です。

文庫本については、現時点(2025年5月時点)で刊行されているという情報は確認できません。
しかし人気作品のため、今後の展開に期待する声もあるかもしれません。
印象的な表紙デザイン
表紙デザインも、この作品のもつ独特な雰囲気を象徴しています。
鮮やかな赤い背景に、大きく菊の花が描かれており、非常に印象的です。このデザインは美しさの中にどこか不穏な空気や、物語のテーマ性を暗示しているようだと感じる読者もいるようです。
書店で手に取る際にも、ひときわ目を引くデザインといえます。
「ツミデミック あらすじ」総まとめと主要ポイント

「ツミデミック」が私たちに問いかけるもの
『ツミデミック』は、コロナ禍における人間の脆さと強さ、そして「罪」の意味を問う作品です。

6つの物語は現代社会と人々の複雑な心理を映し出し、日常や価値観を見つめ直すきっかけとなるでしょう。
それでは最後にポイントを箇条書きでまとめます。
- 作者は第171回直木賞受賞作家の一穂ミチである
- コロナ禍における人々の「罪」をテーマにした6編の短編集
- 出版社は光文社で、ハードカバーや電子書籍などで読める
- 収録短編はそれぞれ独立した物語となっている
- 登場するのはパンデミック下で葛藤する平凡な人々だ
- 「違う羽の鳥」は死んだはずの同級生を巡るミステリアスな話である
- タイトル「ツミデミック」はパンデミックと「罪」や「詰み」を意味する造語
- コロナ禍のリアルな描写と巧みな心理描写が大きな魅力である
- 一冊でサスペンスから感動話まで多様なテイストを楽しめる
- 読者からは共感の声や作者の筆力を称賛する感想が多数寄せられている
- 直木賞選考では時代を捉えた文学性と完成度が高く評価された
- 人間ドラマや社会派作品、質の高い短編集を求める人にオススメ
- 表紙は赤い背景に菊の花が描かれた印象的なデザインである
最後まで見ていただきありがとうございました。